『アズワンネットワーク、あるいは〈中空=円〉の可能性』熊倉敬聡さん

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10月度のアズワンセミナーに参加した熊倉敬聡さんが、春秋社のwebマガジン『はるとあき』の連載記事の中で、自身のセミナー体験を取り上げ論じています。『GEIJUTSU論――藝術2.0をさぐる思考の旅』、第八回「アズワンネットワーク、あるいは〈中空=円〉の可能性」というタイトルです。

熊倉さんの連載意図は、「藝術2.0の未だ朧な実相を思想的に追い詰め、少しでも明瞭な姿を浮かび上がらせたいと目論んでいる。それが本論に他ならない」とするもので、その中に、アズワンセミナーを位置づけ、ふれているようです。

その冒頭と、セミナーに関する部分を抜き出して、ここに紹介します。
全文は次のタイトルをクリックしてご覧ください。web春秋に飛びます。(編集:いわた)


アズワンネットワーク、あるいは〈中空=円〉の可能性

(1)あるセミナーに参加して

 秋の澄んだ夕日に映え、金色こんじきにきらめく、庭の葉叢。そのきらめきと響きあうように、こちら、暮れなずむ部屋のうちに円座する人たちの沈黙が、きらめく。そのきらめきを、皆、静かに味わい、深めている。一人が、言葉を発しはじめる。しかし、その言葉、心の奥底から発せられる言葉は、沈黙を乱すどころか、さらにそれを豊かに、神々しいものにさえしていく。そう、〈円〉の只中に、漠としているが、何か〈聖なるもの〉が降臨するかのよう。でも、あくまで沈黙として、沈黙のきらめきとして、ひしひしと満たしにくるにすぎない。
 三重県鈴鹿。昨日まで、F1の命がけの爆音が、彼方で響きわたっていた。そんななか、ある古びた一軒家で、五泊六日のセミナーがひっそりと営まれていた。「アズワンセミナー」。私も参加者の一人として、「探究」を深めていた。

 このセミナーで、探求で、何をしていたのだろう。ただ円く座り、語りあい、聴きあっていたにすぎない。それは、「サイエンズメソッド」という方法に則り、行われる。


(中略)


 サイエンズメソッドによる探究は、こうして六日間にわたり、先述のように「視る・聴く」から始まって、「幸せ」に至るまで、たえず円く座りながら、自分の中で、各々の“間”で、掘り下げられていった。

 この間、私自身も多くの発見があった。とりわけ大きかったものを二つ挙げよう。

(1)私は20歳代、日本やフランスで文学や思想の研究をしていたせいで、極度に「頭」に偏った生活を送っていた。そのためもあってか、「体」が荒廃し、強度の喘息など多くの病を患い、「廃墟」寸前ともいえる状態だった。その後、30歳代になり、たまたま出会ったコンテンポラリー・ダンスのワークショップ(勅使河原三郎率いるKARAS)に、そうした体を引きずりながら、結局8年ほど通うことによって、「体」「感覚」そしてなによりも健康を取り戻していった。今回のセミナーは、そうして取り戻していった「頭」と「体」の“調和”の中で、自らもほとんど気づかぬまま長年置き去りにしていた「心」、いや、ある家族との確執から封印を余儀なくされ、硬い鎧を纏わざるをえなかった「心」を再発見することになった。参加者一人一人の発する言葉に籠められた「心」の波動が、私の“鎧”に幾条もの“ひび”を生じさせ、そこから「心」がわずかながらも溶け出す思いがした。


(中略)


(2)「アズワン」とは?

(中略)


 こうした真に融通無碍なアズワンネットワークは鈴鹿を拠点にしているが、国内のここかしこへと、さらに国外にも(今のところ主に韓国とブラジル)、その網の目を広げつつある。今の課題の一つは、このコミュニティ作りの手法と思想が、鈴鹿に集うメンバーや賛同者だけに意味をもつ「特殊」なものなのか、それとも作る主体やその社会的・自然的環境が異なっても、活用でき根づくことのできる、一種の「汎用性」を持ちうるのかどうか、という点だろう。そこにこそ、「ネットワーク」が「一つの世界」へと成長していけるかどうかの鍵が隠されている。しかも、繰り返しになるが、その「一つの世界」が、政治的ないし宗教的「理想社会」の実現ではなく、あくまで「本心」が交響する「きらめき」の重々無尽のネットワークであるかどうかにかかっている。


(3)〈円〉の可能性、そして藝術2.0

(中略)

 私たちは、セミナーで訥々と言葉を発しあい、丹念に聴きあい、黙しあいながら、いわば「マンダラ」を描いていたのではないだろうか。そして、その〈円〉の「中心」に向けて、互いの「自己」を深めあいながら、その深めあいの波動を交わして、そこにしか立ち現れないであろう一つの大いなる〈自己〉を探究していたのではないだろうか。


(中略)


 アズワンネットワークがめざす「一つの世界」も、この「中性」的とも言える、充溢せる中空=〈円〉が、ここかしこ、次々と起こり、連なっていくような星座のきらめきのごとき「世界」ではないだろうか。



(中略)


 〈円〉で座り、〈中空〉を支えあい、頭と心と体のエネルギー=気を込めあいながら、かけがえのない、その時その場でその人たちでしか生み出すことのできない、生のきらめき、神々しさ。そこにもまた、藝術2.0の可能性が宿っているように、私には思われるのである。


熊倉敬聡さんのプロフィール(「web春秋」より転載)
1959年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、パリ第7大学博士課程修了(文学博士)。Ours lab. 共同代表。元慶應義塾大学教授、元京都造形芸術大学教授。フランス文学 ・思想、特にステファヌ・マラルメの貨幣思想を研究後、コンテンポラリー・アートやダンスに関する研究・批評・実践等を行う。大学を地域・社会へと開く新しい学び場「三田の家」、社会変革の“道場”こと「Impact Hub Kyoto」などの 立ち上げ・運営に携わる。主な著作に『瞑想とギフトエコノミー』(サンガ)、『汎瞑想』、『美学特殊C』、『脱芸術/脱資本主義論』(以上、慶應義塾大学出版会)などがある。http://ourslab.wixsite.com/ours


◆アズワンセミナーについての詳細は次をクリック
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