震災から 人の復興を思う

3.11、東日本大震災から丸8年が過ぎました。岩手に住む吉田直美さん(アズワンネットワーク・イーハトーブ)が、その震災を振り返り、思いの丈を綴っています。人が人らしく暮らすには、吉田さんがやろうとしていることとは――




◆震災のあとから

吉田直美(アズワンネットワーク・イーハトーブ)=上記写真


あの日、静かで穏やかな日だった

弱いもの,無防備なもの,自然環境から収奪して成り立つ資本主義経済が浸透し,人々の価値観や行動も「金の原理」に縛られ,日本はなんて息苦しいんだろう。この国を脱出して,南の島で貨幣経済と積極的にかかわらないくらしをしたい。。あの日まではそう思っていた。

これまでに体験したことのない激しい揺れに襲われたあの日。電気は止まり,スーパー,コンビニも限定営業。こんな状況の中で自分の身の回りで起こったことは,ないものを奪い合う自己中心的な暴動ではなく,あるものの分かち合い,工夫して使う利他的なくらしだった。道路の信号も機能していなかったが,交通事故も起こらなかった。いつもより,静かで穏やかな日だった。
そのような「いつもと違う状態」を体験し,これをきっかけに,この国もまだ捨てたものじゃない,この国でも,あの南の島のような生き心地の良いくらしができるのではないか。そういう風に気持ちが変わっていった。

震災の影響が収まってから,そのモデルとなるような暮らし方をしている人たちをネットで探し求めた。いくつか気になったところには訪問して,その空気感を味わった。そんな中で出会ったのが,アズワンネットワーク鈴鹿コミュニティ(以下「アズワン鈴鹿」。)だった。

ここでは,争いのない平和な社会を目指し,その目的を実現するための仕組みが試行錯誤されているようだった。そこに集う人々は,お金の心配をしている風でもなく,仕事に追われている風でもなく,どの人も安心の中で穏やかに暮らしているように見えた。そしてここで醸し出されているムードは,自分が望んだあの南の島でのくらしのムードにそっくりだったのである。

このモデルに触れて,日本でも自分が望むようなくらし方ができるんだと,目からウロコが落ちた。このようなくらしが自分の身の回りでも出来たら,わざわざ南の島に移住しなくてもよくなる。よし,この仕組みをまねてやってみよう!と,最初はそんな高揚感でいっぱいだった。

コミュニティをつくることが目的?

アズワン鈴鹿には,その運営ノウハウがあるのではと思い,通い始めの時は気になるところ,疑問点などを矢継ぎ早にコミュニティの人たちに聞いている自分がいた。しかし,それはかなり焦点がずれていたなと今では思う。

自分の場合,良好なコミュニティがありさえすれば,その中で幸せに生きていける。コミュニティを作ることが目的で,そのノウハウに焦点が当たっていた。しかし,アズワン鈴鹿では,コミュニティを作ることが目的ではないように見受けられる。あくまでも一人ひとりが自己や社会を探究し,「人間を知り,人間らしく生きる」ことを目的としていて,そういう人たちが集まると自然とコミュニティとなる,という成り立ち方をしているのではと,ある日気がついた。

アズワン鈴鹿に通うにつれ,自分自身も「人を知り,人間らしく生きる」というのがどういうことなのか,ぼんやりとながらも見え始め,そうなると,日々のくらしがずいぶん楽になっていく喜びも感じ始めている。


人が人らしくなってくると,まずは自らが満たされ,自然と他の人も大事にしたいと思う。こういう状態の人たちが集まり,織りなす暮らしは豊かな感じがする。こうして,安心して生きていける生活基盤(コミュニティ)は出来上がっていくのだろうとも思う。

今,自分がやろうとしていることは,コミュニティを作ることではなくて,まずは人を知ること。資本主義経済から脱することではなく,本来の社会で生ようとすること。

震災で大きな犠牲を受けたこの岩手・イーハトーヴの地に,震災の傷を乗り越えて,あの南の島のような生き心地のよいくらし方のモデルロールができたら。。。そういうことをこれからやっていきたいと思っている。



吉田さんから次のようなコメントを寄せてもらいました。

◆内面のパラダイムシフトを

今年の3.11を迎えて,書きたくなりました。
あれから丸8年がたち,被災地も,施設・設備,住宅や街並みの再建といった,外形的な復興は進んでいるように思います。あれだけの被害をもたらした震災があったので,外形的な復興で終わりとせず,震災前よりも平和で,幸せな生き方に向かうための「人の意識の変革」といった内面的なパラダイムシフトもできないかなぁと思い,そんな気持ちからこの文を書きました。そして,岩手の人に限らず,あの震災で受けたショックをばねに,内面のパラダイムシフトを望んでいる人たちにもこの文が響けばいいなぁとも思っています。

それと、かつての自分がそうだったように,地元でも,新しい取り組みを進めるとか,イベントをやって盛り上げるといったように,ややもすると事柄を進めることが目的化している場合もあるように思います。取り組みをするのも,イベントをやるのも,まずは人。人の意識がどうなっているのか,ここに焦点が当たったうえで事柄が営まれる。そうなると,より本質的で持続可能なものになっていくのではと思っています。


◆吉田直美さんの連載記事
1 意識の囚われからの解放
2 人らしく生きる,それを知る
3 人の心に焦点が当たっているか
4 自由になるのは難しくない


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