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【次の社会創造】 連載第9回  争いのない、気持のままにやさしく生きられる社会へ

次の社会創造 連載第9回
【争いのない、気持のままにやさしく生きられる社会へ】
サイエンズ研究所  小野雅司
次の社会創造

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連載第9回
第三章
3. 心が満たされる会社 ~『おふくろさん弁当』『鈴鹿ファーム』の実践から

規則も命令も上司も責任もない会社って、想像ができますか?
実際に、そういう会社が、この資本主義社会の日本の中に存在しているのです。

「争いのない、気持のままにやさしく生きられる社会」の経済的基盤を創ろうということで、自分達でコミュニティビジネスを立ち上げ、運営しています。コミュニティビジネスによってコミュニティ全体が豊かになり、その中で各人も豊かに暮らせます。
そういう会社の中では、稼ぐために働かなければという仕事はありません。やりたい人がやりたくてやる仕事になります。仕事をすることで、その人が満たされる、そして、その仕事から生み出されるものを受けて多くの人が満たされるのです。
各自の持ち味を発揮できる、その人に適した持ち場を見出すことに重点を置いています。
自分が持っている技術や知識や経験を人のために生かしたい、使ってもらいたいという気持だけでやる心地よさ、快適さを実感している人がたくさんいます。
上下や罰則のない、何でも話し合える会社の中で、自分の持ち味を発揮し、心が満たされていく会社づくりが進行中です。

おふくろさん弁当は、今年で16年目を迎えます。社員が約50名。一日約1000食の手作り弁当を製造し、ピンクの車で一個でも配達するというスタイルで、鈴鹿・四日市・津・亀山の人達に親しまれています。
「本当に美味しい弁当とはどういうものか」を探りながら、上下や命令によらない話し合いで運営する会社を試みています。

会社設立当初から、目指すものはハッキリあったのですが、最初から順調に進んだわけではありません。試行錯誤、研究と試験の連続で進んできた16年です。(今もその途上です!)
例えば、「昼の弁当は12時までに絶対に届けてください」と言ってくるお客さんもいるので、「やらなければなない」というフィクションからなかなか解放されることができないでいました。そういうフィクションに縛られると、会社の中もギクシャクしてしまいますね。
研究が進むにつれて、「自分達はどうしたいのだろう?」と自らに問い直すことができるようになってきました。「やらなければならない」という世界ではなく、「本当はこうしたい」という本心からの世界が見えてくるのです。自分の原点に立ち返ると、「言われるから届けなければいけない」のではなくて、「美味しいお弁当を、待っている人に届けていきたい」という、会社を立ち上げた原点、やりたい気持が、自分の心の中にあるのが見えてくるのです。

研究が進んできたと言っても、人がやる営みですから、日々、いろいろな事が起こりますし、ミスや失敗ももちろんあります。
例えば、特別弁当を100個作って届けに行ったら、「あのー、それ、来週の注文なんですけど・・・」ということもあったりするのです。1個1000円の弁当でしたら、10万円になりますよね(汗)。一般の社会では、こういう事が起きると、「誰のせいだ!」と責めたり、責任問題になったり、始末書を書くなど、いろいろ面倒な事が起きそうな「事件!」になりそうです。
しかし、責めたり、責任追及したりしても何になるのでしょうか?
責めても、間違いが元に戻るわけではありません。
できることは、今ある100個の弁当をどう活かすか、そして、二度と同じ間違いが起こらないように、何が原因かを探究すること(責任追及ではないです!)です。
この例の場合は、その持ち帰られた弁当は、コミュニティの人達にすぐに連絡が行って、コミュニティの人達が美味しく味わうことができました。そして、「こういう事がなぜ起きたのか?」と原因を探る中で、今回の間違いが次に生かされていくようになるのです。このような間違いから、受付方法の見直し、そして、特別弁当の専門の部署の創設へとつながっていくことになりました。
また、そのような事が起こった時に、人を責める気持や、誰かのせいにしようとする考え方などが、関係する人の内面で発生したりします。「こういうことが起きたら責める気持が出て当り前だ」と当然としないで、そういう内面もどうなっているのだろう?と探究する対象になっていきます。次第に、責めのない人同士に育ち合っていくことができるのです。
そういう責めのない気風の中で、安心して楽に働ける職場環境ができつつあります。責められると思うと、責められないように、間違いを隠したり、嘘をついたり、ミスを言いにくいような警戒する気風ができてしまいます。責められることがないからこそ、明るく出来事を話し合うことができ、問題の核心が何かが見出しやすくなるので、問題解決がスムーズに進んでいきます。

鈴鹿ファームという若い人達が2010年に設立した農業の会社もあり、地元の人達に野菜を供給しています。囲いや隔てのない関係性なので、人もモノも自在に交流し生かし合う関係ができています。農繁期には、弁当屋から人が駆けつけたりします。また、弁当屋は、鈴鹿ファームでできた野菜をできるだけ生かそうとしています。形の悪いものもできるだけ、弁当の食材に生かせるように工夫しますし、豊作でたくさんできたものは、できるだけ多く弁当のメニューに入れるように工夫していきます。(2021年5月から、より一つで運営し、人もモノも最大に生かし合えるようにとの願いから、二つの会社は一つの会社に合併されました)。

ティール組織やホラクラシー組織という次世代型の経営の仕方が話題になっているようですが、自分達で、固定したフィクションから解放されて、心底で願っていることを見出しながら進むことで、現実にこういう会社が実現していけるのだと思います。
全国各地で、それぞれの理想とするものを形にしていけるといいですね!
おふくろさん弁当や鈴鹿ファームは、その一つの実例になるかなと思っています。一度、現在進行中のおふくろさん弁当や鈴鹿ファームの実際を見に来てくださいね。
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