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ドイツ サステナを学ぶ旅(5)バウハウスで考える



美しさと機能性と快適さ Hiroko Katayama





ゼロに立つ 

こういうまっしかくな鉄骨による建物が、20世紀初頭に突然現れた時、市民の人たちはどのような印象を持っただろう。ヴィッテンベルグに向かう途中、デッセウにあるこの建築物を見に立ち寄った。今も建築や芸術の専門学校として、この校舎で多くの学生や専門家が学んでいる。
東ドイツ時代には文化的なものへの手入れが行き届かず、ずいぶん傷んでいたところを、統一後に修復してきた経過が写真で紹介されていた。中に入ってみたが、洗面所も大きくて使いやすかった。もう100年に近い建物を、こうやって丁寧に使い続けている歴史の厚みを感じさせられた。



バウハウスとは、1919年に設立された世界初の美術学校で、閉鎖までの14年間という短期間であるにもかかわらず、工芸、デザイン、美術や建築など総合的な芸術教育を行った。もともとイギリスで起きたアーツアンドクラフツという、近代化による大量生産で生まれた粗悪な製品とその生産体系について、手作り工芸品の良さに回帰しようとする運動に端を発しているとのことだが、バウハウスの中でも審美的な流れと、機能性合理性を追求する、大きく二つの流れが生まれたそうだ。このデッセウにみる校舎は、世界初のモダン建築として、機能性と合理性を追求したもので、世界に紹介された。現代でも、たとえばルイヴィトンのロゴなどに、そのデザインの影響を見ることが出来ると聞いた。
開校から14年間の間に、カンディンスキーや、クレー、モンドリアンなども迎えられて、総合芸術の専門研究が進んだという。

Hahn博士によれば、心の面を無視したものとしても考えさせられるが、とても美しい建築物だと思う、と言っていた。私も、写真でも見える扉の鉄錆のような渋い赤がとてもよく効いているように感じて目が離せなくなる。魅力を感じてやまない。そういう惹かれる感覚、美しさをどこで人は感じ取っているんだろうか。
ただ、迎え入れられた教授陣は、同じように四角い現代デザインの住居にすむことに決められていたらしく、他に選択肢がなかったとのこと。





ともあれ、なぜこのような新しさが人々に迎え入れられたのか、考えさせられたが、一つには産業構造が大きく変わって、大量生産に向いた規格品が必要になり、規格品と美の融合、新しいデザインへの欲求が産業界にあったということのようだ。
そういう意味で、時代を切り開く質の新しさや美ではあっても、それを用いていくときに、何を目的としているのかが問われていくことになるのかな。

バウハウスからヴィッテンベルグに向かう途中に、バウハウスのモダン芸術の影響は受けたが、やさしさや快適さ、住む人の日常に寄り添う形のデザインで創られたアパート群があった。
これも時代を経て今も尚、手入れされながら、日常に人々が暮らしていた。

サステナの旅(6)「庭園型エコビレッジ」へつづく

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