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「持続可能なエコビレッジ」に必要不可欠なものとは? 及川修司さんに聞く


アズワンネットワーク北海道の窓口 及川修司さん
プロフィール 44歳
北海道小樽市で特別支援学校の寄宿舎指導員を務めると同時に、北海道大学の社会人大学院生でもある。
NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトの理事も務める。

先月、北海道で、アズワンネットワーク北海道とNPO北海道エコビレッジ推進プロジェクトの共催で、「おふくろさん弁当 社長係 岸浪龍氏」の講演会を開いた及川修司さんに、その活動の動機や今後の展開など聞いてみた。
――どのような過程で、アズワンネットワークに関わるようになったのですか?

及川:大学院の修士論文を構想している時に、自分が携わっているエコビレッジとの比較研究ができる事例を探していて、インターネットで検索していたら、鈴鹿コミュニティがヒットしたんです。ホームページに書かれている内容に魅かれて、実際見てみようと、探訪DAYに2年前に参加したのが最初のきっかけです。

その後「持続可能な社会づくりカレッジ第5期」、「サイエンズセミナー」などに参加し、大学院のインターンシップで「おふくろさん弁当」と「SUZUKA FARM」で労働体験をして、留学生やコミュニティに住む人たちへのインタビューなどで、たびたび鈴鹿を来訪する。



及川:論文のテーマは、「エコビレッジの形成や持続的な運営を可能にするツーリズム創造」です。私が取り上げるツーリズムは、「食べる・観る」という一般的な観光とは違って、多様な他者との出会いを起点とした「学習・交流・体験型」のツーリズムです。
鈴鹿で開催されているカレッジでは、各地から来た参加者が学び合い、そこでの成果を自分たちの地域で活かしていくことで、さらなる共感者が鈴鹿を訪れるという循環構造が見られます。まさに、ラーニング(学び)・ツーリズムによる、“価値共有と仲間作り”が、アズワンネットワークとしての運動論の推進やコミュニティの持続性につながっているように見えました。

――及川さんが携わっているエコビレッジはどんなところで何をやられているんですか?



及川:北海道の余市はニッカウィスキーの工場があり、NHKの朝ドラで有名になりましたが、同時にワイナリーがたくさんある農山村でもあります。その山間部に拠点を構え、都市農村交流プロジェクトとして、首都圏の修学旅行生や都市の子ども達に生活体験や自然体験の機会を提供しています。さらに、地域の農家さんと連携して、学習プログラムを開発し、エコカレッジの講座を開催したりして、「持続可能な暮らしと地域づくり」のための学びの機会を創造しています。

もう一つの柱は地域トランジッションの活動です。地域の中で小規模ながらも、経済もエネルギーも循環することを目指しています。具体的には“地域マルシェ”を開催し、地元農家さんの野菜や加工品を集めて販売したり、“フットパス”と言って、ツアーを組んで、地域の自然の中を散策します。ただ歩くんじゃなくて、途中農家さんに寄って、農家さんの農業に対する思いや哲学に触れます。そのことで分断されている生産者と消費者を結んでいきます。そんな地道な活動もしています。


――そのような活動の中で、どうしてサイエンズメソッドの必要性を感じたのですか?

及川:知識や技術はあっても、実際そこでやる人たちの気持ちの繋がりをどう高めたらいいのかというのが、自分なりの課題としてずっとあって、でもそこを突破していかないと、持続していかないだろうと思い、鈴鹿コミュニティを研究対象にしたわけです。それで余市のエコビレッジの人に鈴鹿コミュニティを紹介しました。すごく興味を持ってくれて、アズワンの小野さんの講演会も企画しましたが、日々の事柄が忙しくて、頭では分かっていても、どうしても、目の前のことを対処していくことに追われていく感じがありました。

もちろん、活動や事業をやっていく上で、事柄に関わる打ち合わせや話し合いは大事なことです。しかし、鈴鹿コミュニティでは、それだけではなく、自分の本当の願いに気づくために、「自分を観察していく自分を獲得する」という個人の内面に着目する部分を開発していました。そこを他者と共に取り組むことは革新的だと思いました。

人間って思考が発達していて、「思考による価値付け」と「もっともっとの欲求」が絡み合うと、『やりたい』という感情が暴走することがあります。しかし、そんな時に一歩引いて自分で自分の内面を観る回路が確立されていれば、本心に立ち還りコントロールできると思いました。さらに、そこを深めていけば、頭だけの理解ではなく、そもそも人との間に上下がないことや本来は自他が一体であることに自然と到達していくように感じ、改めてサイエンズメソッドを身に付けていきたいと思いを強くしているところです。



及川さんが鈴鹿コミュニティに関心を寄せている中で、「内面を観察する」「他者と一緒に深まる」と表現していることを「サイエンズメソッド」と呼んでいる。鈴鹿コミュニティは、この方式を用いて、「一つの世界」の実現を試みている。そしてこの「サイエンズメソッド」は、世界中の誰にでもどのような活動にも用いられる方式だ。

――今後の展開は?

及川:「人間はどうしてもっと仲良くできないんだろうか。一人ひとり違うわけですから、一人ひとりを活かし合えばいいだけなのに・・・その世界観への扉を開く『サイエンズメソッド』を自分でも身につけ、地域の多くの人たちや一緒に活動している仲間たちにも知ってもらいたいですね」


人はどうして仲良くできないのだろう?という疑問から、持続可能なエコビレッジの運営に関わり、やはり知識や技術だけでは実現できないことに、「サイエンズメソッド」に出会うことで気づき、同時にこの方法を身につけることで実現の可能性を確信している及川さんの今後の北海道での活動に注目したい。(聞き手・編集MARU)
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