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「しあわせの経済」世界フォーラム連動企画@鈴鹿、インド・中国の知恵を


11月11日、12日に東京で開催された世界フォーラムに続いて、鈴鹿でも

アジアは一つの文化圏

「『しあわせの経済』世界フォーラムin東京」の開催から、その連動企画が全国各地で開かれています。その一つとして鈴鹿でも11月15日に公開ミニシンポジウムが持たれました。パネラーは、海外からゲスト講師として世界フォーラムに登壇された、インドのシータ・アナンタシバンさんと中国のジャン・ランインさんのお二人です。

前日からアズワン鈴鹿コミュニティを見学し、ここでは人間の内面やこころに焦点を当てた取り組みや実践・研究がされていることにとても共感され、また、シンポジウムのトークでもその内容が反映されていたようです。


スクリーンの古代文字は何でしょう?➡本文へ
シンポジウムには、地元からと神戸、大阪、奈良、岐阜などの近県からの参加者もありました。パネラーの通訳には、中国から留学中の明治学院大の学生さんたちが入られ、日中交流の活動をするファンシーさんがジャンさんの通訳をしてくれました。同じアジア圏にある中国、インド、そして日本でもグローバル化の影響で同質の問題が発生しています。お二人のトークはとても興味深いものでした。簡単に紹介させて頂きます。


インドのシータ・アナンタシバンさん

無意識に刷り込まれている教育

インドでホリスティック教育に携わってきたシータさんは、今の教育が無意識に与えている影響と幸せとはどういうものかを語ってくれました。

「今の若者にとってのヒーローは、一夜にして大儲けするような人です。そういう人をマスコミが大きく取り上げるので刷り込まれてしまう。近代化以降、商業主義によって、農村を出て工場で働くようになりました。そのための教育がされてきた。教師は恐怖で生徒をコントロールし、退屈な授業を受けさせます。退屈さに慣れさせるのです。工場での単純作業に慣れるための訓練でもあります。これが無意識に行われている教育です。
95%の無意識が行動を決定しているのです。その無意識が子ども時代につくられていきます。学校では、生徒の背中を見て座り、怖い先生の顔を15年間見続けて過ごす。それによって、友達よりも、教科書や先生や成績が大事だと思い込んでいく。本来、学びとは、総合的なもので、生活や暮らしの中にあり、人格を形成し、心が成長していくことです。

近代化は、すぐ結果が出ることを大事だとしてきました。薬を飲んだら病気が治るという直線的な思考です。しかし、自然や生命はそういう単純なものではありません。もっと複雑で総合的なバランスの中で成り立っています。体の健康や幸せも、そういう状態のことを言うのです。様々な条件が整って健康や幸せがあるのです。美味しいものを食べて、美味しいと感じることを、私は幸せだとはとらえていません。」



シータさんがインドで取り組む「“緑の知恵”の学校」や「ブーミ・カレッジ」では、自然の中で、森に入り、土に親しみ、人の温かさにふれて、地球や命の働きを総合的に学んでいるといいます。自然と共生し思いやりのある精神的価値を持つ人こそが真のヒーローで、「私たちがそのヒーローになるべきです」と結びました。


中国のジャン・ランインさん

中国の農村再生運動

続いて、中国のジャンさん(張 蘭英)は、現在中国がおかれている農村の現状と中国の智慧に基づく持続可能な農業や農村再生活動についての発表がありました。

「今中国では、初心を忘れるな、と言われています。私たちはどこから来たのか?祖先はみな農村に住んでいたと思います。そこに私たちの根っこがある。(映像を指して)この古代の文字が何か分かりますか?二人が対面してお酒を酌み交わし人生を楽しんでいる様に見えます。〝郷〟という漢字です。肥沃な土地で作物を育て暮らしていた。2500年前には季節を表す二十四節季が作られ、それを元に農業が営まれ、農耕文化が作られてきました。しかし、今では気候変動によって通用しなくなった。

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中国は水不足で水の確保に多くの灌漑施設がつくられていますが、そこにも自然との共生の知恵があります。

(画像を示し)これは、四川省成都の川に作られた灌漑施設です。10年間かかけて自然を観察して作ったもので、雨期と干ばつ期によって川の流れが変わるシステムになっています。

中国も急速な近代化によって、農村が過疎化し疲弊しました。農作物が商品化されてしまった。それに対して、今中国では、新しい農村建設のムーブメントが起こっています。Uターンする若者も増えている。私も過去10年で10万人の大学生を農村に送り勉強してもらいました。

儒教の考え方に、平和な社会を築くためには、まず自分自身を整えること、次に家を整え、社会システムを構築すること、とあります。政府の政策でも生態文明を打ち出しています。それには国の基礎となる村の自治から始めることです。タオイズムでも無為自然な生き方を説き、平和な心持で平和な社会が出来ていくのです。私たちはその太陽で、散って満天の星になるでしょう」

IT技術ともつき合う知恵を

参加者の感想も聞いてみました。
「スローな暮らし、ゆったりとした暮らしが大事なことがわかりました。高速回転になって、忙しさで幸せをどこかに置き忘れてしまった。ITや文明を手放すのではなく、十分つき合っていく知恵をもちつつ、行き過ぎたところを戻して、持続可能に生きていくための心を培い、足元からやっていきたい」


ジャンさんの通訳をするファンシー(朱 惠雯)さん

中国からも多くの学生たちが今、日本の大学に持続可能なシステムを学びに来ていると言います。
通訳をしてくれたファンシーさんも、東アジアが一つの文化圏であることを強調していました。ある意味で、現在のグローバリゼーションは欧米の思想や文化が世界を覆い、その結果が気候変動や地域文化を脅かしているとも言えるでしょう。インドや中国には古くからの偉大な知恵があり、東洋の叡智が、ローカリゼーションにはかかせません。
近隣の国どうしがネットワークしつながることは、争いや国境のない一つの世界を実現していく大きな一歩です。その萌芽を感じる鈴鹿でのシンポジウムとなりました。(写真と記事:いわた)


「中国、インド、日本の女性たちで何かやりたい」と片山弘子さん(じぇんジャパン)


拍手で、今日のシンポジウムのパネラーと参加者を讃えました
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