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1st CSS 3「人が学び育つ環境とは?」



 写真右:小野雅司(サイエンズ研究所 一般財団法人アズワン財団代表)

【Second half】
“人が学び育つ環境とは?”

 後半は、サイエンズ研究所の小野雅司さんより、2018年4月開校のサイエンズアカデミーについての紹介があり、「人が学び、育つ」とはどういうことか?についてがテーマとなった。
 サイエンズアカデミーと小野さんの研究活動については以下を参照。
http://as-one.main.jp/zaidan/HP/index.html
http://as-one.main.jp/zaidan/HP/ono.html
 小野さんからの紹介は、サイエンズアカデミーからの抜粋より。

争いのない幸せな世界の実現に向けて

 「戦争の世紀」とも言われた20世紀が終わり21世紀になっても、未だに世界各地に争いや対立は絶えず、貧富の差がますます広がり、環境破壊も進んでいます。
科学技術が進歩し、物やサービスが豊かになっても、人の心は不安を抱えたままです。
 人間社会とはこのようなものなのでしょうか?
 私達は、人間には理想を描き、それを実現する創造力があると考えています。
 誰もが安心して暮らせ、その人らしく生きられる社会を描き、実際に実現するのがアズワンネットワークの目的です。2001年からアズワン鈴鹿コミュニティの試み、また日本各地や海外での実践を積み重ねてきました。
 その中で、サイエンズメソッドという、人間らしい生き方を実現する方式を見出しました。この方式は、どこでも、何にでも用いることができ、現在、日本だけでなく、韓国やブラジルにも導入されています。コミュニティづくりはもちろん、会社経営、シェアハウスの運営、子育てや教育、シニアの生き方など、様々な分野に応用され、人間らしく生きられる社会づくりに生かされています。

未来の社会を創造する人材を

 理想の社会を創り出すには、既存の常識や価値観に執われず、全く新しい立ち位置から考え、行動できる人材が必要になります。
 人間や社会の本来の姿を知り、それを現実の社会の中に実現していくクリエイティブな力を有する人材を育成することが急がれています。
 世界中どこでも、誰とでも、何でも話し合うことができ、主体的に、自分らしく生き、その場を創っていける人材です。
 2001年からのアズワンネットワーク活動の中で、そのような人材が育っていく過程が明らかになってきました。
 2009年以降、アズワン鈴鹿コミュニティで様々な研修生を受入れ、留学制度も試み、人材育成の研究と実績を重ね、この2018年4月より、まったく新たに「サイエンズアカデミー」として、広くその門戸を開くことになりました。
 サイエンズアカデミーで学ぶことで、人として成長し、本質的なことに重点をおくことができる人材を世界各地・各分野に送り出していきたいと願っています。

 まったく新しい社会づくり実践の蓄積の上に

 サイエンズアカデミーは、争いのない幸せな世界の実現を目指して活動するアズワンネットワークの諸機関の協力の中で運営されます。
 サイエンズアカデミーは、一般財団法人アズワン財団の人材育成事業です。
 サイエンズアカデミーは、現時点でアズワンネットワークの諸機関が集中してある鈴鹿が学びの拠点になります。
 誰もが本心で生きられる社会を試みるアズワン鈴鹿コミュニティでは、人と人とが親しい間柄で営む暮らしを体験し、人のための会社を試みる「おふくろさん弁当」「Suzuka Farm」「鈴鹿カルチャーステーション」などの職場で研修します。
 サイエンズスクールでは自分自身を調べ人としての成長をはかり、
 サイエンズ研究所の研究機会を通して人と社会の本来の姿を学んでいきます。
 また、日本各地や韓国やブラジル等のアズワンネットワークの活動拠点も研修フィールドになっていきます。
 すべてを学びの機会として生かして、人として成長し、サイエンズメソッドを学び会得し、次の社会を創れる人材として世界に飛び立っていきます。



 サイエンズアカデミーの紹介の後、交わされたやり取りについても抜粋して挙げておく。

関根
:サイエンズアカデミーの扉をたたく人たちのように、学ぶ目的や意欲をしっかり持っている人は本当に幸せですね。
 私は大学の教員になって7年になりますが、何を学んだらよいのか分からない、何に向かっていったらいいのか分からない学生たちが日本には多くいると感じています。
 ずっと褒められて何の疑問も持たずに「良い大学、良い会社へ」で来ている子もいますし、逆に、「お前はダメだ、もっと勉強しろ」と押し付けられてきて、学ぶ意欲を失ってきている子たちもいます。
 ダメ出しをされてきた子どもたちがたくさんいますね。
 勉強嫌いで、机の前に座っていることすら苦痛になってきてしまう。
 また教育制度にも問題がありますね。日本ではフランスのようなバカロレア試験(フランス教育省が発行する、中等教育レベル認証の国家資格)もないし、高校までは何となく卒業できてしまう。そして推薦で大学には入れてしまう。
 そうすると、「大学からの学びなおし」になるわけですが、これは大変なことなんです。
 学ぶテクニックを教えることではなく、学ぶことへのモチベーションを一人ひとりが持てるようになることが肝要ですから。
 また、私も大学の教員になってみて、最初は「単位取得」を飴にしたり鞭にしたりして勉強させようという安易な方向に行きやすかったのですが、それでは、本当に学生たちは伸びないということは分かってきましたね。
 学ぶ環境をどう作るかですね。

小野:学びたくない子にどう学ばせるか?
 無理がありますよね。

関根:諺にもありますが、まさに「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」んだと実感します。
(中略)

真保:関根先生が担当されている学生たちの将来のヴィジョンは、どうですか?

関根:経済学部なので、お金が好きな子が多いですね。(笑)
 ですから他の価値観に触れさせる機会をどう作るかも重要になって来るんです。それで、実際の農業者と触れ合う機会もつくるようにしています。中には、そうした体験で進路を考え直す子もいます。
(中略)

 写真左 福田博也(サイエンズスクールJAPAN)

福田:今の教育は、関根先生が言われていたように、教えられたり押し付けられたりすることで、勉強嫌いになるケースが多いと思います。……そして何よりも大きいのは、そうやってずっと用意されたことを受け身でしてきているので、「自分が何をしたいのかが分からない」ということだと思います。

関根:そう問われても、考えたことがないので、答えられないんですよね。
 学校教育の中でそういうことを考える機会がなかったということでしょうね。
(中略)

真保:話は変わりますが、大学卒業してから新規就農するというケースもあるんですか?

関根:はい、東海地域では新規就農は増えていますね。若者が農業に関心を持ち、就農するのは、世界的な流れでもあります。僅かではありますけど、それを過小評価しないで次の動きに繋げていくことなのではないかと思います。

真保:都会で大企業に就職するという価値観から、田舎で新規就農という価値観も出てきているのは、より人間らしい暮らしをしたいという現れでもあると思うのですが、田舎に行ったからといっても、良好な人間関係が築けるとは限らないのではないですか?

関根:実は私自身も幼少期に都会から高知へ引っ越した経験があるんです。Iターンのはしりだったかもしれませんが、両親に連れられて。そこでは、田舎の地域社会に馴染むことの大変さを身をもって知りました。
 もちろん、今でも連絡を取り合っている良い仲間とも出会えましたが、ムラ社会とか地域コミュニティに新規就農で入っていく難しさは今も変わらずあるでしょうね。

真保:そうなんですよね。サイエンズ研究所でも、研究が進むにつれて、すべての問題の元には「人と人とがどういう結びつきをしているかにある」というのが明らかになって来て、鈴鹿コミュニティを創ってくる過程でも、ずっと人間関係に焦点を当ててきたんです。
 その辺りも是非、研究対象にしてもらいたいと思っています。

関根:ムラ社会というと祭事に政治も絡み・・・と複雑になりがちですね。異質だから排除するのではなく、異質なものと融合するというのが大きなテーマになってきますね。
 そして個人個人の他者に対する理解や、それぞれの人間関係も大事なんですが、やはり社会としてみると政治、経済、教育などの影響もかなりありますから、その仕組み自体も大きく変えないと社会の中での良好な人間関係というのも機能していかないのではないかと思います。


 写真右 坂井和貴(サイエンズ研究所 一般社団法人鈴鹿カルチャーステーション代表)

坂井:そうですね、人と人の関係、人と社会の関係、その本質を探究しながら、小さな規模ですが、新しい政治や経済のシステムを採り入れたり、教育についても、サイエンズスクール、今度開校するサイエンズアカデミー、そして乳幼児たちのキンダーハウスと様々な試みもしながらコミュニティづくりをしている最中なので、関根先生にも、ここの社会実験を研究対象にしてもらえると嬉しいですね。

関根:「ヒッポファミリークラブ」のこと、ご存知ですか。私も最近知ったのですが。世界に何万という言語はあっても、人間同属の中では一つの言語というような考え方だったと思います。
 分け隔てをしないというところに、アズワンネットワークと共通するものを感じました。
(参考)https://www.lexhippo.gr.jp/
 「ことばは全て、同じ人間のことばである。ヒッポには「外国語」というものは存在しない。自分のこどもが生まれた時「この子が大きくなった時、世界はどんどん狭くなっていくだろう。
 そんな世界を伸び伸び生きていってほしい。」

坂井:残念ながら、タイムアップです。これから、もっと内容に関することのセッションに入っていこうかというところでしたが、関根さんの乗られる電車が出てしまいます。
 1年後に、ローマから帰られたら是非とも第2弾をやりましょう。

関根:本当ですか?ありがとうございます。



【最後に】
 セッションの内容は、本当にまだまだこれからという感じだが、何かやり終わった後に、参加した私たちの心の中に残った「もっと、共に探っていきたい」という純粋な欲求を、繋げていきたいと思う。
 今回は、アインシュタインの言葉で始まったので、エンディングも彼の言葉をお借りすることにする。(文・坂井)

Education is what remains after one has forgotten what one has learned in school. The aim must be the training of independently acting and thinking individuals who see in the service of the community their hightest life problem.
 教育とは、学校で学んだことを一切忘れてしまった後に、なお残っているもの。そして、その力を社会が直面する諸問題の解決に役立たせるべく、考え行動できる人間を育てること、それが教育の目的といえよう。

(おわり)

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