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心温まる世界!『次の社会へ 人知革命』読後感

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『SCIENZ No.6 次の社会へ 人知革命』の読後感が寄せられました。川上弘美さんの小説『神様』の世界に重ねて、その感想を綴っています。「小説に描かれた世界が実際に実現しているのではないか」という宮地昌幸さん(アズワン鈴鹿コミュニティ)の感想をどうぞ!


小説と重なる心温まる世界 実際に実現

読んでみて、つくづく想った。

とても、不思議な本だ。

「次の社会」と聞いたら、現状の社会の分析からはじまり、
その問題点を解決する「社会のしくみ」が構想されて、人の暮らしが
こんなふうになるとか、そんなイメージが出てくる。
現状の社会の分析なんて、世の学者さんが知の粋を集めて研究されている。

われら凡人には手のとどかない世界と思っていた。

サイエンズ研究所から最近刊行された『次の社会へ 人知革命』は、

先ず「人間を知り、人間らしく生きる」を解説している。

社会の現象を観察・研究する前に、「人間とはどういうものか」

つまり人間の一人である「自分」の意識や心の状態を観察、どうなって
いるか探ってみるというのだ。

人の誕生はエネルギーと好奇心に満ちていた。

それが、気がついてみると、

「いまの自分はこんなんだ」「いまの社会はどうしようもない」などと、

どこかで諦め的な気分に染まっていやしないかなあ。

自分の内心に静かに耳を澄まし、問いかけていったら、

「本当の本当はこんな生き方がしたい」とか「こんな社会に暮らしたい」という

気持ちに出会うことができるかもしれない。


『次の社会へ 人知革命』はそこからはじめるというのだ。

これなら、市井の老若男女、どんな立場の人、境遇の人でも
現状そのままで、はじめられる。

「ホンマかいな?」と思うかな?

そこからはじまって、願う生き方や社会が実現していく道筋が丁寧に書かれていた。

しかも、言葉や理屈のことでなく、実際のいま、現状そのままで
そんな社会が実践されているというレポートでもある。


むかし、小説家の川上弘美さんの小品『神様』を読んで心に残っている。

ある日、主人公の「私」が住むアパートにクマが引っ越してきた。

クマは引越し蕎麦で近隣に挨拶してまわる。主人公の「私」はクマと
意気投合し、お弁当をもって、散歩に出かける。クマは川に入って、
魚をとり、干物にして、「私」に贈ってくれた。

ストーリーとしては、これだけ。

3・11東北大震災で福島原発がメルトダウン、放射能汚染が日本を覆った。

川上はその後、同じストーリー、同じ『神様』というタイトルで、
クマと汚染された環境や人の姿と触れながらクマと散歩したという物語を書いた。

クマと私の間柄は汚染前とその後も変わらない。

クマと私には、隔てのない心の交流があるようだった。

クマは「神の恵みあれ」というが、ぼくの捉え方はクマのなかにも
「私」のなかにある本当の願いが通いあっていたんじゃないかと。


ちょっと、唐突かもしれないが、『次の社会へ 人知革命』の
読後感は、そんな小説の世界が空想ではなく、実際に実現している
のではないかという発見だった。

こころ温まる感じがした。


今の時代、このような本に関心をもつ人は多くないと思うんですが、

一度は読んで欲しいなあと思いました。

何人かで、輪読できたら、この本の見え方も変わるかな。

                   (宮地昌幸さん)

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