コミュニティ通貨の試み始まる 3

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「マイナスは幸せの額」

RINKAでお給料をもらってもいいというSさんを訪ねた。
Sさんは、おふくろさん弁当に勤めている女性で、気さくで、こちらから聞かなくてもよく喋ってくれる。まずその第一声は――
「RINKAショップを作ってほしい。」
え、何それ?
「RINKAを使って、買い物が出来るスーパーみたいなの。
お金、お金って言っても、要は、生活に必要なものが手にはいったらいいわけじゃん。食品とか日用品とか、だからRINKAが使えるお店が出来れば、いいと思うよ。
お給料も、家賃分は現金でもらって、あとの生活費分はRINKAでいいわけでしょ。旅行に行くとかでお金が必要な時は、RINKAバンクを創って、そこで換金してもらうとかさ…」

人と人との関わり合いを示す額

使えば使うほど口座がマイナスになるという説明会での話も――
「自分の口座がマイナスだと、悪いこと、借金、って思うかもしれないけど、私は、その話を聞いたとき、自分の口座がマイナスってことは、いろんな人が力になってくれてて、それって“幸せな額”なんだって思ったの。プラスなら、こんな自分でも力になれたんだ、って思う。人と人との関わり合いを示す額なんだって思った。マイナスだったら自分も何かしてプラスにしよって機動力にもなると思うし…」
なるほど、人に世話になった分、それだけ自分は幸せってことか。お金の世界では見過ごされてしまうところだ。RINKAは人と人との関係に改めて気づかせてくれるツールなのかもしれない。

人生どう生きるか、を考える時、お金をどう稼ぐか、という発想になるのも世間では普通だと思うが、その辺は?
「私は、現金を得るために、嫌な仕事をしたり、頑張るのは疲れる。お金を稼ぐために生まれてきたわけでもない。
一人ひとりにはいろんな力が隠れていると思う。たとえお金にならなくても、その人の持っているものが生かされたら最終的には豊かになったりすることもあると思う。

自分の存在意義って?

自分は何をしたらいいんだろうって、やることを求めてさ迷う人がいる。自分の存在意義をやる事柄に求めたりする。それが見えないと自分の存在意義がないって、自殺しちゃう。
だけど、自分の存在意義ってそんなことではない。
植物人間は何も出来ないけど、存在意義がないかって? そんなことじゃない。やることをやるために生まれてきたんじゃないと思う。

つきつめれば、みんな与えられているものばっかり。
命も。どうして生まれたかも分からないし。
今、この時間も。
一人じゃ何も出来ない。協力しあっていかないと。私は、みんな一人ひとりが生かしあえるような社会になったらいいなと思う。そういうのをつくりたい。それって私のやりたいこと。」
何を当たり前としているのか、話を聞いていると、その常識観念が揺らいでくる。つづく。
次号は9月24日にアップします。(取材=いわた)
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