「豊かな地域とは豊かな人生から」山崎亮さんのお話


コミュニティデザインの山崎亮さん

◆人生哲学と経済を語る

7月14日、ユネスコ認証の教育プログラム「ガイアエデュケーション」の公開講座がアズワン鈴鹿コミュニティにある鈴鹿カルチャーステーションで開催されました。講師は、コミュニティデザインの山崎亮さん。著名人とあって、会場には100人を超える参加者が詰めかけ熱心に耳を傾けました。「医療・福祉・介護は地域づくりのカギ」というお題が一応ありましたが、会場の雰囲気に合わせて話をするという山崎さんのスタイル。蓋をあけてみると、
「今日は本当に珍しい。自分のプロジェクトを一つもしゃべらなかった。年に1回か2回くらいだと思う」という講演になったのでした。パソコンに収めた3200枚のデータの事例を紹介することもなく、「豊かな人生とは何か」を、ソローの『森の生活』を例に、山崎さんの理想とする生活や人生の在り方を語ってくれたのです。




◆旅は歩いて行く

ソローは、1週間のうち1日だけ働けば、残り6日間は働かなくてもいい。それは実現可能だと、2年2か月の森の生活で実証したのだそうです。
散歩と旅が大好きで、友達と比較してこんな話をしたとか。
「友達は旅に特急列車で行くと言うが、私は歩いていく。特急列車で1時間で目的地に行けたとしても、電車代を稼ぐのに8時間働いていたとしたら9時間かかったことになる。私は歩いて8時間かかってもその道中こそが楽しい」
ソローは、自然界の森羅万象をみつめているだけでめちゃくちゃ楽しめたようです。それは、神話から哲学・思想、社会学や生物学などを学んだからだと。現代人は消費社会の中で物を欲しがるように学ばされている、その学ぶ対象を変えたら、お金を使わないで豊かな人生が送れるのではないか、と山崎さんはいいます。

デザイナーであり、建物や公園や道路を作ることが「地域づくり」だと思い込んでいたそうですが、「地域」とは人の人生がつくっているもの。豊かな人生とは他者にいい影響を与え続けられる人生を歩むこと、そんな人たちがいる地域が豊かな地域ではないか、とも。

大阪弁の語り口と好奇心溢れる態度は、ソローの人生を体現しているかのようで、今、この場所で、自分の人生を楽しんでいるようでした。


後半はトークセッション

◆人と人の中にある人生の面白さ

公開講座後半は、山崎さんに並んで、理想の暮らしを語る会の中井正信さん、いなべ市で「暮らしの保健室」を開いている水谷祐哉さん、アズワン鈴鹿コミュニティづくりを進め研究している小野雅司さんとのトークセッションがありました。

小野さんが、「自然界には豊かな営みがありますが、人と人の中にもすごい面白さがある。小説や映画の題材になるのも人生。どの人にも人生があって、それを知り合うだけですごく豊かになる。そこに人生の豊かさがあるのでは。
そういう関係性の中では、介護する側される側というのもなくなり、してあげて嬉しい、されて嬉しい関係がある」と話しました。

そこを汲んで、山崎さんも「ソローは自然を見てクスクス笑っていましたが、われわれはジャングルに行かなくても、人の中に密林があるわけですね。その密林を探りに行くかどうか。地域の人がおじいちゃんおばあちゃんに話を聞きに行く、そんな介護施設が出来てくれば…」

介護のこれからもちょっと垣間見れたようです。

以下、アズワン鈴鹿コミュニティのメンバーも山崎さんと交流して、その印象を綴っているので紹介します。(記事:IWATA)




残った参加者と山崎さんを囲んで
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