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ドイツよりハーン氏 アズワンコミュニティを再訪

初夏の風が新緑を揺らしていた5月20日の朝、ドイツからエクハルト・ハーン氏(72歳)が来日しました。ハーン氏は、ドルトムント大学で建築・都市計画、人間行動学を研究し、環境都市の観点で東ベルリンの復興にも関わってきました。
現在も、EU各国における環境に配慮した都市計画アドバイザーとして多忙な毎日を過ごしているそうです。
歓迎会ウリさんと2
鈴鹿訪問は、今回で3度目となります。
2009年秋に、鈴鹿が環境調和型持続可能な社会のモデルになるようにとエコ・ステーションの提案をし、昨年は、アズワンコミュニティ鈴鹿の実情を視察とともに、3・11東北大震災後の復興の視察や東北の研究者との交流もしました。
その後ベルリンで、この「やさしい社会」づくりの試みを研究者や実際家に紹介すると、スタディ・ツアーで見学したいという反応もあったそうです。
そして今回は、アズワンコミュニティ探訪へ

●小野雅司さんと対談●
(アズワンコミュニテイステーション縁側ホールにて)
小野さんと

ハーン氏:「ここのコミュニテイの暮らしは誰でも関われるのですか?」

(小野さん)
誰と誰が、コミュニテイのメンバーか分からないというのが、
実際のところでしょうか。
人の繋がり方として、濃い関係のつきあいもあるし、地域社会の中で、学校、お弁当屋さん、はたけ公園、お年寄りの会など、いろいろなつきあいもあり、親しさに濃い薄いがあるけど、そこに隔てや囲いがあるわけではないので、誰でもいろいろなところから関わっていける感じです。

ハーンさん:「心のメンバーシップですかね。これから、進めたいことは?」

(小野さん)
贈り合いの社会になっていくことですかね。
もっと、社会に甘えられる。他の人でやれることはやってもらい、
自分が本当にやりたいことが出来るような


ハーンさん 「進めたいたいこと、もっとありますか?」

(小野さん)
お金でも贈り合いでやっていけたらと・・・(笑)

ハーンさん 「えー?・・・、ああ・・・。それはおもしろい!それは、いい!」

●おふくろさん弁当屋●
泉田さんが案内してくれました。
泉田さんと
ハーンさん 「自家産の米・野菜の割合は?」

(泉田さん)
米なら約半年、野菜は季節によってちがう・・・


ハーンさん 「職場の実情はどんなですか?」

(泉田さん)
やりたい人でやれている。
急にお弁当の数が増えてもやりたい人がいっぱいいる。
生活のため、お金を稼ぐためにやっているという空気がないかな。
お弁当屋さんのみんなと
コンベアを最近入れてみて・・・
ふつう工場などでは、私語厳禁だけど、コンベアを使ってみると、分散していたメンバーが一ヶ所に寄って、その賑やかなこと!


●街のはたけ公園●
中井正信さん、大平達男さんが、はたけ公園を散策しながら案内しました。
はたけ公園案内

(中井さん)
「はたけ公園は、㈱SUZUKA FARMと、地域の年寄り達で立上げた地域創生みえの会の二つの団体で使っています。


ハーンさん 「地域創生って、どんな意味ですか?」

(大平さん)
地域の人と人が、野菜づくりでつながるだけでなく、人間として、隔てなくつきあっていける社会づくりを目指している。


ハーンさん 「地域の人とは、どのくらいの規模でかかわっていますか?」

(大平さん)
子どもと老人のコラボで野菜を育てたり、収穫して食べるイベントとか、素人野菜づくり集団ベジコミクラブをつくって、コミュニテイに贈りものとして届けている。


●ライフストア●
岸上典子さんが案内し、午後3時半すぎ、たくさんの人たちが寄ってきました。
ストアにて
SUZUKA FARMからお米・各種野菜、お弁当屋さんから数種の惣菜、ベジコミクラブから蕗やスナックエンドウなどが届き、
コミュニティにかかわる人たちが、夕食の食材を取りにやって来ます。
そして、時には井戸端会議みたいにもなります。

ハーンさんは、以前会ったことのある人たちと、「やあ」と手を取り合いす。

●コミュニティライフオフィス●
竹本美代子さんと話しをしました。
オフィスの表札

(美代子さん)
コミュニティライフオフィスは、昨年7月ごろからはじまりました。暮らしの相談窓口と言ったらいいですかね。仕事のこと、家族のこと、家計のこと、なんでも安心して相談できます


ハーンさん「相談に来る人は決まっているのですか?。
       どのくらいの人がいますか?。
       どんなことをしてるのかな?、具体的に」

美代子さん(美代子さん)
今は、100人ぐらいいるかな。
安心して話ができるようになると、
その人が望んでいることが自然に出てくるようです。
ファームの青年が野菜を作っているけど、
本当の気持ちは売りたいのではなく、
欲しい人に食べてほしいなど・・・。
それを、オフィスで聞いて、やれるところから、
そういう願いを実現させたいと、ライフストアを立ち上げました。
一人ひとりの家計の相談にのったりしますが、
生計は、それぞれの家族で立てています。
おふくろさん弁当で働いている人は、そこが生活費の財源になっています。
他で働いて収入を得ている人もいます。
ある若夫婦で子どもが生まれて、車が欲しいけど、当面、お金がない。
それを聞いて、考えているうちに、お金を無利子で貸すよ、
という人が出てきました。


ハーンさん
    「それは、goodだ。オフィス自体に財源はないが、
     お互いの間に垣根がなくて、情報がいっぱい集まってきている。
     それを、一人ひとりにとって、最適になるように、
     支え合いになるように、仕向けているのかな。
     成功的事例と言えるだろう。


そして夕食後は、懇談会。
ハーン氏2いろんな人が、いろいろなプロジェクトをそれぞれやっている感じがする。
何かコミュニテイとして、共通の考え方があり、それに個人が合わせていくというのではないようだ。
個人個人が大事にされている、そういう印象がして感動した。
私はこれまで、これからの人間生活はどうあったらいいか、都市のテーマでは、持続可能な都市というのはどんなものか、考えてきた。
鈴鹿カルチャステーションのような、エコ・ステーションをつくり、街のいろいろな人たちが寄ってきて、自分たちの街をどんなものにしたいか話し合いながら作ってきた。

一つの例として、食糧も都市のなかで自給できないかと、誰もが参加できるコンパクトな菜園という方式も考え出した。農業の研修ができる仕組みもつくった。
(そして、感想の最後に・・・)
今回、まわってみて、まだまだアズワンの場合、閉じている感じがした。

それを聞いた参加者の一人、岩田さんが、
「どんなところでそんな印象をもったのですか?」と聞きました。

(ハーンさん)
アズワンで積み重ねてきた経験は、コミュニティを作っていく上でとても貴重な経験です。それを、広く他の人たちに広げていきたいという話をどこでも聞かなかった。あまりにも知らせていないように感じました。


岩田さん(岩田さん)
そこなんですよね。
ぼくの場合、10年ほどこの街に住み、アズワンともかかわって暮らしてきたんですが、ここでやっていることがどんなことをやっているのか理解しはじめたのは、最近なんですよ。(笑い)

そして、その夜の懇談は終わり、翌日の懇談会へと続きました。

翌日の懇談会は、ハーン氏の
昨夜は、私の哲学から話してしまいました。アズワンがやっていることを街の人にもっとオープンにしたらいいなとも思ったのですがが、みなさんの考えも聞かせてもらえたらと思います。
と始まりました。

小野さん
小野さんそうですね、ここは伝えておきたいです。
アズワンの進み方は、コミュニティをつくるとか、社会をつくるというとき、社会に決まりをつくって、それに人が合わせるという行き方をしてこなかったんです。
コミュニティに従うでなく、やるもやらないも一人一人の意志に寄って営まれる。
それが、ベースというか、自然な人の姿かと思います。
やりたい人はやる、やりたくない人はやらない。
「やった方がいいかな」とか「やらないと、まずいんじゃないか」もありません。


(ハーンさん)
それは、そうでうすよね。


そして、岩田さんから質問。
昨夜から話を聞いていて、ハーンさんはコミュニティの何に関心があるのかなぁと思いました。
カタチはないけど、動いている。
カタチのことをあまり言わないので、もどかしい感じもありますか?


(ハーンさん)
そうですね・・・。私は、世界中のコミュニテイというところに視察に行き、滞在し、研究してきました。
実際を見ていくと、人と人の間に対立や戦いのようなものがあり、必ずしも調和的ではない。途中で壊れてしまうケースもある。
アズワンがなぜこんなにも上手くいっているか、そこに関心がある。
私的には、サイエンズとよばれる考え方があるというところが違うのではと思いますが・・・。
今は、あまり知られていなくとも、今後、人と社会を総合的に見直していく試みは大事だと思います。
そして、持続可能な社会の方向に育てていくには、エコステーションを立ち上げ、多くの人が交流し、より多くの人たちの協力が要ると思います。


岩田さんが、立ち上がり部屋から出て行って、画用紙とマジックペンを持ってきました。

岩田さん
アズワンコミュニテイといっても、
周囲近隣と切り離されているわけでなないんです。
(絵に描きながら・・・)
PIESS NETWORKの絵
境があるわけではない。
それでも、ここにはサイエンズをベースに、お互い隔てなく、遠慮や気兼ねのいらない人と人の繋がりでやっていこうとしている人たちが暮らしている。
そこから、醸し出される気風が近隣に伝わっていけば、もともと隔てがあるわけではないので、寄りたくなった人が、寄ってくるし、親しさで繋がっていくはずだけど・・・


ハーンさん
そうですね。サイエンズの中身を深めていくことと、その経験を伝えていくこと、両方いるでしょうね。

懇談会は、だいたいこんな感じで終わったようです。

参観や懇談を通して、ハーン氏は何を感じていったのでしょうか?!
言葉での理解を超えて、時間をかけても、心底通じ合うお付き合い、
そういう人と人の間柄へと進んでいった探訪でもあったようです。

10日間の滞在中、京都・大阪・神戸・東京で講演し、29日の夜、日本での最終講演を終え、帰国の途に着きました。
また、来年会いましょう。

*この記事は、宮地さんのブログ「かたつむり・つれずれ」の
「エクハルト・ハーン氏がアズワンを探訪した(下)」
「エクハルト・ハーン氏がアズワンを探訪した(下)」)から抜粋・編集しました。
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