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人生、最期まで自分らしく生きるために



どう生きたいかを伝えること

「“人生の完成期を最も自分らしく生きるために”ケアマネージャーが語る在宅看取り」というテーマで、理想の暮らしを語る会8月度公開講座が8月19日に鈴鹿カルチャーステーションで開催されました。講師は、在宅看取り支援・居宅介護支援事業所ゆずりはの萩貴子さん。自身のケアマネの経験と看取りの体験を交えて、人生の終わりに向かってどう準備していったらよいかというお話です。

講演の終わりで強調していたのは、自分の意志を周りの人に伝えること、相談すること、話し合うことでした。

「子どもらに迷惑をかけたくないから施設に行くわという方もいますが、本当は?って聞きたい。子どもさんたちも本当はどうしたいか、本当に看れないのか。看取りというよりも、今後の自分達の人生について、自分はこうしたいんやけど、お前たちどう思う、くらいの話しはしてもらえたらと思う。

最期を自分らしく生きるのは難しい。でも、“生きるために”話をしてください。自分と向き合って、どうするか、でなく、最期までどう生きたいかを考えて下さい。そしてその思いを周りの人に伝えて下さい。」

と締めくくりました。

参加した方の感想を紹介します。


講師の萩貴子さん



10年、母を支えてくれた

ケアマネの仕事をしながら、ご両親を看取られた話を具体的に語って下さった事が、特に心に響きました。実際、看取りまでには何年もの月日がかかります。私の実家の母もALSで11年の間、ケアマネさんと、デイサービスの担当の方にお世話になりました。病状が進むにつれて、その都度、母の意志を尊重しながら、家族にとっても一番ラクに看られて、経費も考えてくれて、父はどれだけ助かったことでしょう。私も近くで支えながら、ケアマネさんと、親しくなって来ました。

そして、今年の5月に胆管癌が見つかり、一月あまりで旅立っていきました。その間、入院した生協病院の医師とケアマネさんを入れて家族で今後を話し合ったとき、生協病院の若い医師が母に「家に帰りたいですか?」と問いかけてくれました。諦めていた母は本当に嬉しそうでした。「家に帰りたいなら、何時でも家に訪問しますよ」と言ってくれたのが心強かったです。その後のケアマネさんとデイサービスの担当の方々のお世話で、母は、最期は入院にはなりましたが、心穏やかに家に居るように旅立ちました。そして、その後の父のケアも相談しながら進めています。

母は早くからALSになったことで、たくさんの方々のお世話を糧にすることが出来、10年あまりを生き抜いたと思います。

どんな障害や病気を迎えようと、これだけの人達が仕事の役目を超えて、取り組んでいることを信頼していくことが大切だと、学ばせてもらいました。(辻屋康子)




死生観の見直しから

在宅看取りということについて、地元のケアマネージャーの萩さんがご自身の体験も交えて詳しく話してくれた。参加者も多く、関心の高さが伺えた。
現状では、最後は住み慣れた場所でと希望する人が多くても、病院で死を迎える人がほとんどだとか……
胃ろうするかしないかの問題についても、本人はすでに認知症を患っていて、結局は家族とのやりとりになるケースが多いそうだ。

萩さんは何度も、「元気なうちに家族と話し合っておいてください」と言う。
参加者にそのあたりを投げかけるも、具体的に話をしている人はたった一人だった。
70代の夫婦でも、「まだまだ元気だから」とあまりピンと来ないようだった。
日本人の死生観はいつのまに「死は悪、生こそ善」と死を遠ざけるようになったのだろうか……
実感は湧かない若者ならまだしも、中高年の間でも、「生きる」ということには「死」は含まれていないようだ。

というよりも、自分の人生をプロデュースする意識が薄いようにも見える。
病院や医者まかせの依存体質が、行政の不備を助長しているのかもしれない。
利用する側からの声をどんどん上げてほしいと、施設見学ツアーなどの提案もできるとか…
具体的に足を運んだりするうちに、だんだんとイメージが出来てくるのかもしれないなと思った。

人というのは必ず死ぬ。

このあたりの当たり前の視点から、「最期まで自分らしく生きる」ということを考えていきたい。
死は怖いことではないというところまで、行き着くには…… これが今後の課題かなと思った。(今井亜子)




理想の暮らしを語る会の中井さんが、講演を依頼した萩さんとのご縁を話した。
人は一人では決して生きることは出来ない。死ぬ時もそうだろう。
自分の思い通りに生きていけることは、最も自分らしく生きられることだろうと思う。それには、周囲とのコミュニケーションがなくては実現しないことでもあろう。周りの人たちとどういう人間関係を築いていけるか、何でも相談できるお互いになれたら、心強い。
そうなるには、という活動が、理想の暮らしを語る会のやりたいところなのかな、と話を聞いて思った。(岩田)



《お知らせ》
『介護の日 市民公開講座』
テーマ「私らしさと地域包括ケア」
講師 堀田聡子先生(慶応大学 健康マネジメント研究科教授)
10月3日(火)午後2:30~4時
鈴鹿市文化会館けやきホール 参加費:無料
主催 鈴鹿亀山地区介護支援専門員協会
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