「ラダック・懐かしい未来」 辻信一さんのお話③



人類は、より豊かに、快適に、幸福に、と発展してきましたが、同時に自ら作ったルールや社会が肥大化し、暴走しているのでしょうか。そのシステムの中で一人一人が息苦しさを感じながらも、スピードを止められないでいます。時間に追い立てられ、仲間や隣人と争い、自分を守ることに必死です。
これを緩める手立てはあるのでしょうか。その知恵とは?
そのアプローチが、ローカリゼーションへの道だと辻さんは明言します。
その前にもう少しグローバリゼーションの問題点を明らかにしておきましょう。

時間戦争による被害

辻さんによれば「問題は時間だ」と指摘します。
「今の経済学で一番大事なのは効率化なんです。同じものを作るのに、より短い時間で作るってことです。つまり、時間なんです。ミヒャエル・エンデの『モモ』は時間についての哲学書ですね。彼は“第三次世界大戦が始まっている。それは時間の戦争だ”と言っている。自然の時間と社会の時間がぶつかり合う。社会の時間がどんどん加速するので、自然の時間をそのまま許しておけない。自然を見て腹を立てる。何でもっと速く実が生らない。だから一瞬で加速させようとする。遺伝子組み換えをしちゃう。社会時間と経済時間もぶつかりあう。社会時間は、家族の団らんや友達との時間。経済が時間を加速させる。そんな暇があったら働け!って。ぼくら生き物です。人間時間を生きなきゃ。それを経済時間に追いまくられたら病気になりますよ。みんな同じマインドセットをもってて、おかしいって誰もいえない。裸の王様状態です。」(辻さん)

シューマッハが指摘する4つの戦争も同様です。経済が引き起こす国どうしの戦争。自然を破壊する戦争。隣人をライバル視し敵として争う人どうしの戦争。未来世代から豊かさを奪う戦争。経済はこうした争いを引き起こし、平和を破壊しているのです。
パックスロマーナから続く、パックスアメリカーナ、その次は、パックスエコノミカルです。経済支配のもとの平和です。経済に支配されている限りにおいて安定しているだけなのです。このような経済のグローバル化によって人や自然や未来が失われているのです。そこを、ローカリゼーションによって取り戻そうという運動が辻さんの本旨でもあります。




スロー・スモール・ローカルでいこう

ローカリゼーションへのアプローチ――
ヘレナ・ノバーク・ホッジの『ラダック・懐かしい未来』の話へ。
ラダックの美しい自然やドラマチックな風景がスクリーンに映し出されます。
「月面」と呼ばれる景観。風と同時に歌う脱穀風景。はためくカラフルな祈祷旗。どこか懐かしいと感じるのは、元々人はこんな場所で暮らしていたからかもしれません。ここにはまだ、かつての人の暮らしが残っているようです。
おそらく、ラダックの人たちに出会い、共に過ごしたら、マインドセットから抜け出せるかもしれない、と感じました。何を当たり前にしているのか。何を大切に生きているのか。そのものに出会えるような…。



「歌を歌うから風が起こるのか、風が起こるから口笛を吹くのかわからない。(一緒に行った)学生たちも感動した。歌と共に風がはじまっているって言うんですよ。風が実と殻を分けていく。こんなに楽し気に歌を歌いながらやっている。これが機械化されるって聞いたときに、学生の一人が叫んだ。“あー歌がなくなっちゃう”。経済学者が聞いたらなんて言うでしょうね。」(辻さん)
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「マインドセットされている僕ら」 辻信一さんのお話②


私たちの日常は“経済”という枠の中で無意識にも暮らしています。どこかで、おカネの心配をしていたり。将来の不安を抱えていたり。そうした原因はどこから来ているのでしょう? 辻さんは、20世紀を代表する経済学者カール・ポランニーを取り上げて解説します。18世紀以降、経済システムはホップ・ステップ・ジャンプと3段階で“制約”から離陸していくというお話です。

マインドセットされている私たち

「資本主義の中に生きていると資本主義的なことが当たり前だと思ってしまう。それをマインドセットと言う。心にガッチと枠が嵌められた状態。これをアインシュタインがこう言ってる。『ある問題を引き起こしたのと、同じマインドセットでその問題を解決することは出来ない。』わかりますか?
何かの思い込みがその問題を引き起こしているわけです。解決しようとしても同じ思い込みのままでは解決できない。僕らのこの時代のマインドセットって何でしょう? 一つは経済成長です。環境が壊れた。福祉におカネがいる。もっと経済成長すれば環境にも福祉にもおカネがいくだろう。こういう発想しか出来ない。
ポランニーは、資本主義以前の社会では、『経済は社会の中に埋め込まれていた』と表現する。それが今は、『社会が経済の中に埋め込まれている』。何をするのにも、全て経済優先。子どもの教育も自分の健康も、結婚、老後も経済からしか考えられない状態。僕らの人生は経済の中に埋め込まれてしまった。
これは人類の歴史から見たら本当に異常事態です。ただの思い込みに過ぎない。そこから僕たち自身を解放することなしに、何一つ解決することは出来ない。」

「ポランニーは、資本主義的なマインドセットを抜け出すために、資本主義以前の社会を研究した。人類の歴史から、経済を相対化してみていく。元々の経済、元々のコミュニティは、互酬性だった。顔と顔が見える関係。生産量が分かり、分かち合っていた。量にも制約があったが、それを不自由だとは感じなかっただろう。
ところが今は、お互いの顔が見えない、制約がみえない。その結果が環境破壊です。
経済は、コミュニティから離陸し、次に自然的制約から離陸し、3段階目には、物でさえなくなってしまった。」(と辻さん)

マインドセットから抜け出すには、“絶対”としていることを“相対化”することだそうです。私たちは日常会話で、絶対こうだ、と使っていますが、絶対と言えることってあるでしょうか? おカネの価値は絶対でしょうか? そのおカネの話に入っていきます。

バーチャルなおカネ
「みなさんおカネって何ですか? 不思議なものです。どこで誰がつくっているんでしょうか。意外と知られてないんですよ。」
と話では、5%ほどが実際に作られた紙幣や貨幣で、95%は何ら物質的裏打ちもないバーチャル状態だとか。そのおカネが世界を高速で飛び回っているそうです。バーチャルだとしたら、どこにあるんでしょうか? 世界?幻想?頭の中? ますますわからなくなってしまいます。

続いて、イギリスの経済学者で『スモールイズビューティフル』の著者、シューマッハを取り上げました。進歩、成長とは一つの信仰であるという話。技術は、より大きく、より多く、より速くという方向に発展しています。その結果が過剰社会となった。そこで辻さんは、スロー・スモール・シンプルの3つのSを掲げ、「人間の身の丈にあった大きさに立ち戻ろうよ」と呼びかけます。

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「ローカル イズ ビューティフル」 辻信一さんのお話①


第2回ガイアエデュケーションの公開講座が5月20日、鈴鹿カルチャーステーションで開かれました。講師は辻信一さん。明治学院大学教授で文化人類学者。スローライフを提唱する著名な環境運動家です。メディアにも度々登場する辻さん。会場も満席となり注目度も抜群で迎えました。記者ももちろん興味津々です。

昨晩は、横浜で落語を披露したとか。辻さんの創作落語で、如何に難しいものだったか、そんな話題で始まりました。そう切り出すくらいですから、講演の方もテンポがいい。グングンと引きこんでいく。2時間があっと言う間。そして中身が濃い~、どこを切っても、面白い。その全部を紹介したくなります。紙面の制約もWEB上なのでありませんが、あえて、そのほんの一部だけ、記者の主観も入り交えてお伝えします。

講演タイトルは、「いよいよローカルの時代、“Local is Beautiful”」。いま世界は、イギリスのEU離脱やトランプ現象など、いっそう混沌としてきました。しかし、この流れは、グローバリゼーションからローカリゼーションへの変わり目だと言います。この現状を歴史的、学術的な見地から読み解き、ローカル化への道を解説してくれました。

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「お金のいらない国」本当にあったら? 落語会で考える



現代に生きるサラリーマン青年が500年後の地球に迷い込む。そこは「お金のいらない国」だった…
「お金をもらわなきゃ仕事なんかしないよ!」と言い張る青年も、その国で過ごすうちに、考え方も変わっていく。お金がなくても、やりたいことが出来て、みんなからも感謝され、そんな暮らしを満喫する。
「こうもよくされたら自分も何かしたくなります! お金? お金なんていりません!」と青年は180度変わっていた、という話が第1話。

こんなフィクションを落語で演じ、「お金のいらない国」を想像してみませんか? と全国各地で講演しているのが長島龍人さん。
長島さん自身が会社でお金の煩わしさを痛感し、いっそお金がなくなったら社会はどうなるんだろう? 元々仕事は何のためにしてるんだろう? とそんな疑問から想像が始まったそうです。仕事、結婚、罰則、教育などをテーマに4巻の本にまとめています。

3年前に鈴鹿では1回目の落語会を開き、今回3回目が5月14日、鈴鹿カルチャーステーションで開催されました。主催は「イマジンの会」。アズワン鈴鹿コミュニティで暮らす有志と賛同する人たちとで実行委員会をつくり、準備してきました。
当日は、はじめて聞きに来ました、という参加者が多く、これまでとはまた違った雰囲気で、笑いよりも、内容の方にみな真剣に耳を傾けていた様子でした。
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「農と食の繋ぎ」は子ども達



好天に恵まれた5月7日の日曜日、街のはたけ公園で「はたけに行こう!はたけで食べよう!」が開かれました。参加者親子はトーモロコシの苗植えとピーナッツの種蒔きをしました。以下、スタッフの大平さんによるレポートです。どうぞ!



鈴鹿循環共生パーティーの「農のある暮らしづくり」として「街のはたけ公園」を舞台に5年ほど前から実施されている。

それは、畑に集うシニア達の「熱き心情」を現すことはできないものかと、はじまった企画だ。シニア世代はある意味用済みの存在でいわば怖いものなし。自己実現化は極めて早い。行政のお達しに沿って進むのも「もっと根本的に」と自己解釈をプラスして「次代に繋ぐ」「根源的」なことをやるのみ、と人生の「遊び」に嵌っているのだろうか。

シニアと子ども達がその家族や友達と共に食する物の種を蒔き、気候経過に左右されながらも成長を待って、やがて収穫し食するという、この地味な一つの行いは、無意識な子ども達だからこそ「農と食」の繋ぎをいざなってくれるのだろうか。

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思い込みに気づく 第1回ガイアエデュケーション レポート



第1回ガイアエデュケーションが4月21日~23日で開催され、参加者・スタッフ共に、何か手応えを掴んだようで、今後の展開がますます楽しみです。そして、参加者のレポートが公開されました。どんな印象だったのでしょう。何か変化はあったのでしょうか? レポートの一部を紹介します。
その前にコミュニティ訪問中のエピソードをどうぞ!



「ママが明るくなった」

「2日目は『親しさでつながるコミュニティとは?』をテーマに、コミュニティの実際の現場、おふくろさん弁当や鈴鹿ファームを訪問しました。
おふくろさん弁当ではまだ入社3ヶ月くらいのママさんのお話がとても印象的でした。
自閉症のお子さんを抱えての仕事はそれは大変で、それでも頑張らなくっちゃならないという現実に、自分も身体を壊したり、子どもも病状が悪化し、入院し、あらゆる治療も施してきたけど一向に良くならなかったそうです。

それが、おふくろさん弁当に働き出してからのママの安心してる状態に-----。
一緒に職場まで付いて来るお子さんも、今では自閉症とは思えないほど明るい子になって、ママよりも出勤数(笑)が多いとか。

親しさって何だろう?と、そんな単純だけど深い問いに皆さんそれぞれの中で探求が始まってきたようです。」(KさんのFBより)



参加者のレポートを以下に紹介します。
「印象に残ったこと、理解が深まったこと、自分の中でおきた変化は?」
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歴史的一歩 ガイアエデュケーション開幕

<スタッフと参加者
4月21日、ガイアエデュケーションがスタートしました。持続可能な地域づくりを実現するためのユネスコ認定の教育プログラムです。
この半年間に渡って、一緒に歩んで行く皆さんが、期待にワクワクドキドキしながら全国から集まってきました。参加者とスタッフの皆さんで記念撮影。

弘子氏とジョバンニ
初日、オープニングセレモニーと公開講座が開かれました。
講座には、アズワン鈴鹿コミュニティの人たちや、遠方からも大勢の皆さんが詰めかけました。
GEN-Japan代表・片山弘子さんの挨拶で始まり、続いて、ガイアエデュケーション副代表のジョパンニさんを紹介。この日のためだけにメキシコから駆け付けたそうです。

ジョバンニさんアップ
ジョバンニさんは、「エコロジーは芸術」という哲学概念でエコビレッジ「Huehuecoyotl」の共同創設者。講座では、今のガイアエデュケーションの世界の動向をプレゼンしてくれました。

ジョバンニ2

会場と

プレゼンの最後に、参加者を讃えて――
「想像さえ出来ればそれを作ることが出来ます。一番大事なのは、自分の生きている地域で何ができるか? という視点です。メキシコで私たちがやっていることと、日本のみなさんの現場では、環境も社会条件もまったく違います。しかし、私たちは一つの先祖から生まれた一つの人類です。この思想はガイアの大事な柱になっています。今から、こういう新しい方向に向けて努力が必要で、歩み続けていくことが大切です。日本の皆さん今日はおめでとうございます。」と締めくくりました。
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ユネスコ認証 ガイア エデュケーションまもなく 開催

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いよいよ今週末から、ユネスコ認証の教育プログラム「ガイアエデュケーション」が、アズワン鈴鹿コミュニティをスタート会場に開催されます。こちらでは、コミュニティメンバーへの説明会も開かれ、プログラム内容にも共感しながら、成功への願いや期待が高まっています。いま、受け入れ準備も進行中。その一端を宮地さんのブログから紹介します。
「ガイアエデュケーション」って何?

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幼児の世界はどんなだろうか? ~3月のはたけ企画より

3月5日(日)に街のはたけ公園で、シニアと子供のコラボ「はたけに行こう!はたけで食べよう!」が開催されました。



今回は、「ジャガイモを植えよう!」
odairaさんの写真とレポートでどうぞ!!
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「理想の暮らしを語る会」 の公開講座

今日は「理想の暮らしを語る会」 の公開講座がありました。



われわれ高齢者にとっては頼もしいお医者さんです。鈴鹿に真鈴川さんのような在宅の医療に取り組まれておられるお医者さんに接することが出来、老いていくことの安心や喜びを見出だすことが出来た二時間でした。ヨーロッパでは遺漏がほとんど無いのは、食べれなくなったら食べないだけで、そういう覚悟がこちらの方にあるかどうか、そういうことが身近になった公開講座でもありました。
(NakaiさんのFacebookより抜粋)
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