恵共同体・アズワン物語〈3〉「本来その人の中にあるもので…」


「本来その人の中にあるもので…」

世間には、ルールやマナーがあり、それを守ることで秩序が保たれている。守らない人もいるから罰則で強制するし、善悪というモラルによって人の行いを統制している。子どもの躾けもそのためだろうが、もっと伸び伸びした方法で秩序ある社会は出来ないのだろうか?

恵共同体の人たちは、そのあたりの根本的な見方が私たちと違っていた。「人は利己的であり、他人を思いやることを訓練しなければ身につかない」
そんな考えだった。また、「日本人はとてもマナーがよい国民だ」とも言った。たしかに、震災直後の日本人の良識のある行動は世界からも注目され、日本人の美意識や誇りにもなっているのかもしれない。

ただ、モラルやマナーは窮屈でもある。時代でも変われば国でも違う。みんながみんな心からしているわけではないだろう。ストレスにもなるから、その反動がどこかに現れる。悪事が絶えない原因はその辺りにありそう。生まれながらの悪人がいるわけではない。人の心の中に本来あるものを発揮することで、調和した社会が出来るのではないか… というのがアズワン鈴鹿コミュニティの試みであり、スタディツアーでも、そこに触れて、その人の中に元々あるものが動き出したら…

そんな願いで、韓国から来る81人をどう受け入れるか、私達のプロジェクトがスタートした。
ところが、願いは願いであるにしても、実際のところ、ミーティングを持つと、「どうする」「こうする」という具体的な話しになった。

通訳出来る人は3人だけ。だったら3つの班に分かれて見学する?
食器の片付け方をどうする?
宿泊会場は4ヶ所だけど、それぞれ何人泊まれるの?
迎えの便は?荷物を運ぶ車は?
緊急時の連絡体制は?
……

実際、それらの問題をどうするかは考えておく必要があるが、みんなで検討することと、担当者が考えておけば済むことがある。関係者がわざわざ集まって検討しなくてもいい。

しかし、中には心配になる人もいて、「トイレの数が足りないじゃないか」「住宅地で、夜騒いだら近所迷惑になる」「食器片付けが大変だから洗浄機で一気にやったほうがいいのでは…」
そんな発言が周囲に心配事を増やし、その心配を無くすためのミーティングが増えていく。そんなこともあったが、無駄骨だった。

プロジェクトは、任し合い、というお互いの中にある心情のようなもので進んだ。たぶん、これが、その人の中にあるもので・・というアズワンならではの進み方だろう。そんなふうにやれるようになってきたのは、これまでの経過があるのだが・・・つづく(文・いわた)
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