2ndCSS「社会・人間・心の“豊かさ”を探る」~科学技術の先にあるものとは~《5》
2nd Crossover Study Session (CSS)
「社会・人間・心の“豊かさ”を探る」
~科学技術の先にあるものとは~ 《5》
◆これまでの記事
第1回 プロローグ
第2回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《1》
第3回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《2》
第4回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《3》
第5回 人間社会にとって必要な研究とその実現とは?《1》
真保 やはり時代的には、一企業がただ利益を上げていくのではなくて、今でもCO2を削減していかないと企業もやっていけなくなって来てますよね。例えば社会貢献的な企業でないとやっていけない。そういう世界的な潮流がもしあるとしたら…。
内藤 潮流はようやく来てますね。ヨーロッパと比べてとても遅いですが…。
真保 だから、今まであんまり見向きもされてなかった“地球環境”とか、“人間幸福”についてとか、もうちょっと関心を持ってもらえないかなと思うんです。
街の中に実現しつつある一つのモデル
内藤 若い子はそれはもうね、持たざるを得ないし、またそれが面白いと。
昔風に、ともかく金稼ぐというような時代じゃないのをよく分かっています。
価値観が変わってきて。それだけに難しいですからね。前の人の後をついていったらいい時代でなくなって、新しい道を切り拓くのが大変でもあり、ある意味で面白いでしょう。
真保 それをね、そういう方向にあるんじゃないかなと思いつつ、ただそれをどう組み立ててったらいいのかと考えるんですよ。実際に、そういう若い研究者が、実際面に関心持って、根本的な課題を解決していきたいというような人たちに行きついて、共に研究していけるにはどうしたらいいかな、って思うんです。
内藤 ここでそういう問題を面白く扱ってくれていたら、必ず見つけて来てくれますよ。
真保 面白く扱う?
片山 面白い取り組みしてるって、話題にするっていう感じですかね。
内藤 話題にしてたらね、世間は乗ってくると思いますよ。だから、ずっと私も関わってきた東近江とか淡路島の活動も、熱心にやっていたら次々に人は寄ってきますよ。有名な“時の人”なんかも自分から寄ってきてくれますね。
小野 へー、そうなんですね。Mさん、『里山資本主義』であちこち引っ張りだこですよね。
内藤 自分から言ってくれる。東近江の取り組みや淡路の取り組みに。
先日「ローカル・サミット」いう、全国の地域創成を目指す人たちの集まりがありましたが、驚くほどたくさんの人が全国から集まって、各自の経験を踏まえてとても熱心に議論がされました。
片山 東近江でやりましたね。
小野 東近江はなかなかですね、そういうことをやり始めたトップランナー。
内藤 まさにトップランナーの一つですね。それでそこから、いくつか具体的に若い子が中心になって、物事が動き始めている。もちろん具体的な問題解決です。その時、10の課題設定がされたんですね。それでそれぞれ自分の関心のとこに集まれということで、集まって議論したなかから、実はもう現場と連動して動き始めてる。
だから、そういうのを一つ仕掛けられてもいいかもしれませんね、アズワンでも。
こんな課題をやろうかと。円卓会議とか言ってテーマを出して。そしたらそれは関心ある若者たちが寄ってきますよ、そして自分らで問題を見つけて提案に繋げます。
それで、東近江ではそれを支援するためのファンドを創ろうということになったわけです。
片山 ああ、“三方よし基金”ですか?近江商人由来の…。
内藤 そうそう、そうすると多くの人達が、出資を向こうから言ってきてくれる感じです。
国も関心は持ってみている。適当な物が無いかと探している。
だからこれはいけそうだな、と思ったら国もね、乗ってくる可能性がある。
小野 それは内藤先生たちのチームで練り上げてきた“東近江モデル”が、街づくりの中に実現してきているわけですね。
内藤 そう言えるかもしれません。それが一度、地域に定着してくると、協力しようという人達が現れてくる時代ですね。だから、ここでもどんな未来社会づくりにチャレンジしているかか知られるとね、そういった人材も寄ってくるし、お金も寄ってきますよ。
小野 なるほど。それはいいなあ。
“U理論”からのインタビュー
片山 まだ未知数ですけど、“U理論(U theory)”ていうのがあってね、人の心の問題っていうかな、本当に気づき、深いところまで内面を探究していったら、そこに本質的なものが見えてくるというようなことを言ってる方たちがいるんです。
小野 MITとか、結構すごい頭脳が集まってます。“学習する組織”っていう研究グループがあって、要するに個人的にも社会的な問題でも、組織自体が学んでいって、それが本質的な解決をどうやって見つけるかっていう、そういうことから出来た理論らしいですけど。
片山 本をある人が紹介してくださって、コアメンバーの一人であるデンマーク人の方とお会いしたんです。その方とお話ししている中で、アズワンでの社会実験ですよね、研究と実験をベースに18年に及ぶ社会づくりの実態と、それと「学びの場」ですね。自分の心の気づきの部分を創っているっていう事に非常に感動されたんです。
それで先日、彼女からインタビュー形式の質問表を送って来られてね、それに答えることになっているんです。
そういうことから、なんか一つ突破口があるかな、と思ってましてね。さっき先生がおっしゃった、総合解析の総合という辺りでは、本当に人間の心の面ですね、精神的な目覚めがあって、そこから本質的、本来的なものが見えてきて、人が育ち合い、新しい社会が創られているという、ここの実態が、“U理論”でやろうとしている“学習する組織”と、共通点があると言いますか、繋がっているように思うんですね。
そのデンマーク人の彼女はエコノミストという面もあるんですけど、資本主義を超えた新しい経済っていうのに関心があったりするもんですからね。
そういう意味で、ここの社会や経済の実態を知りたいのかな、そしてその時の人の内面の状態とかね、知りたがっているのかな、って感じがあるんです。
内藤 私はその分野にちょっとどころか全然疎いから、よう言えませんが、心の内面というのがテーマになった時に個人に還元されてしまうことないですか?
小野 そうですね、どうしてもね、心というとそうなりやすいですね。
内藤 そしたらみんなで寄って力合わせて、各専門分野も合わさって、何かを創り出していこうということをやっていくのは、もう一つ先の段階でしょ?
小野 心のこと、内面って普通に言っちゃうとね、ちょっとこう、その個人に問題があって、それにはまあ宗教とか、或いは修養とか、瞑想とかってなっちゃいますね。その人の心や内面と社会とどう関係があるの?ってね…。
内藤 そういうのが前提に、ちゃんとした心の人達が、集団として社会を創ったら上手くいくよ、という理屈はその通りだと思いますが。次には、そういう志の人達を社会づくりにどう繋ぐかということですかね。
真保 だから、その辺がちょっと接点ができてきたわけですよね。
小野 今インタビューが来てるって言うのは、その“U理論”の研究室とハフポストっていう、あのアメリカ大手のウェブニュースとが組んでトランスフォーミング・キャピタリズム・ラボ(資本主義を変換する実験室、研究)っていうプロジェクトを立てて、そこから質問が来てるんですよね。
だから、どうやらアズワンの経済システムと、その人の内面の変容が両方起こってるということには注目してくれているみたいなんです。
内藤 でしたらここの場合は、具体的な経済の新しい仕組みをどう見せるかでしょうね。
小野 そうですね。多分注目しているのはそっちの方だと思います。
内藤 内面は勝手にやってください、外から見えないから、というわけにはいかない。
そういう新しい経済の仕組みを ちゃんと受け入れられる志の人になっていないと、できないですね。
つづく
「U理論」のWebにアズワンネットワーク鈴鹿コミュニティの活動が紹介されました。Webページはこちらへ>>>https://www.presencing.org/#/transforming-capitalism-lab/gallery/one-household-economy-in-city
The presensing Institute >>>https://www.presencing.org/#/transforming-capitalism-lab
◆これまでの記事
第1回 プロローグ
第2回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《1》
第3回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《2》
第4回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《3》
◆CSSとは
サイエンズ研究所によるCrossover Study Session 1 プロローグ
内藤 潮流はようやく来てますね。ヨーロッパと比べてとても遅いですが…。
真保 だから、今まであんまり見向きもされてなかった“地球環境”とか、“人間幸福”についてとか、もうちょっと関心を持ってもらえないかなと思うんです。
街の中に実現しつつある一つのモデル
内藤 若い子はそれはもうね、持たざるを得ないし、またそれが面白いと。
昔風に、ともかく金稼ぐというような時代じゃないのをよく分かっています。
価値観が変わってきて。それだけに難しいですからね。前の人の後をついていったらいい時代でなくなって、新しい道を切り拓くのが大変でもあり、ある意味で面白いでしょう。
真保 それをね、そういう方向にあるんじゃないかなと思いつつ、ただそれをどう組み立ててったらいいのかと考えるんですよ。実際に、そういう若い研究者が、実際面に関心持って、根本的な課題を解決していきたいというような人たちに行きついて、共に研究していけるにはどうしたらいいかな、って思うんです。
内藤 ここでそういう問題を面白く扱ってくれていたら、必ず見つけて来てくれますよ。
真保 面白く扱う?
片山 面白い取り組みしてるって、話題にするっていう感じですかね。
内藤 話題にしてたらね、世間は乗ってくると思いますよ。だから、ずっと私も関わってきた東近江とか淡路島の活動も、熱心にやっていたら次々に人は寄ってきますよ。有名な“時の人”なんかも自分から寄ってきてくれますね。
小野 へー、そうなんですね。Mさん、『里山資本主義』であちこち引っ張りだこですよね。
内藤 自分から言ってくれる。東近江の取り組みや淡路の取り組みに。
先日「ローカル・サミット」いう、全国の地域創成を目指す人たちの集まりがありましたが、驚くほどたくさんの人が全国から集まって、各自の経験を踏まえてとても熱心に議論がされました。
片山 東近江でやりましたね。
小野 東近江はなかなかですね、そういうことをやり始めたトップランナー。
内藤 まさにトップランナーの一つですね。それでそこから、いくつか具体的に若い子が中心になって、物事が動き始めている。もちろん具体的な問題解決です。その時、10の課題設定がされたんですね。それでそれぞれ自分の関心のとこに集まれということで、集まって議論したなかから、実はもう現場と連動して動き始めてる。
だから、そういうのを一つ仕掛けられてもいいかもしれませんね、アズワンでも。
こんな課題をやろうかと。円卓会議とか言ってテーマを出して。そしたらそれは関心ある若者たちが寄ってきますよ、そして自分らで問題を見つけて提案に繋げます。
それで、東近江ではそれを支援するためのファンドを創ろうということになったわけです。
片山 ああ、“三方よし基金”ですか?近江商人由来の…。
内藤 そうそう、そうすると多くの人達が、出資を向こうから言ってきてくれる感じです。
国も関心は持ってみている。適当な物が無いかと探している。
だからこれはいけそうだな、と思ったら国もね、乗ってくる可能性がある。
小野 それは内藤先生たちのチームで練り上げてきた“東近江モデル”が、街づくりの中に実現してきているわけですね。
内藤 そう言えるかもしれません。それが一度、地域に定着してくると、協力しようという人達が現れてくる時代ですね。だから、ここでもどんな未来社会づくりにチャレンジしているかか知られるとね、そういった人材も寄ってくるし、お金も寄ってきますよ。
小野 なるほど。それはいいなあ。
“U理論”からのインタビュー
片山 まだ未知数ですけど、“U理論(U theory)”ていうのがあってね、人の心の問題っていうかな、本当に気づき、深いところまで内面を探究していったら、そこに本質的なものが見えてくるというようなことを言ってる方たちがいるんです。
小野 MITとか、結構すごい頭脳が集まってます。“学習する組織”っていう研究グループがあって、要するに個人的にも社会的な問題でも、組織自体が学んでいって、それが本質的な解決をどうやって見つけるかっていう、そういうことから出来た理論らしいですけど。
片山 本をある人が紹介してくださって、コアメンバーの一人であるデンマーク人の方とお会いしたんです。その方とお話ししている中で、アズワンでの社会実験ですよね、研究と実験をベースに18年に及ぶ社会づくりの実態と、それと「学びの場」ですね。自分の心の気づきの部分を創っているっていう事に非常に感動されたんです。
それで先日、彼女からインタビュー形式の質問表を送って来られてね、それに答えることになっているんです。
そういうことから、なんか一つ突破口があるかな、と思ってましてね。さっき先生がおっしゃった、総合解析の総合という辺りでは、本当に人間の心の面ですね、精神的な目覚めがあって、そこから本質的、本来的なものが見えてきて、人が育ち合い、新しい社会が創られているという、ここの実態が、“U理論”でやろうとしている“学習する組織”と、共通点があると言いますか、繋がっているように思うんですね。
そのデンマーク人の彼女はエコノミストという面もあるんですけど、資本主義を超えた新しい経済っていうのに関心があったりするもんですからね。
そういう意味で、ここの社会や経済の実態を知りたいのかな、そしてその時の人の内面の状態とかね、知りたがっているのかな、って感じがあるんです。
内藤 私はその分野にちょっとどころか全然疎いから、よう言えませんが、心の内面というのがテーマになった時に個人に還元されてしまうことないですか?
小野 そうですね、どうしてもね、心というとそうなりやすいですね。
内藤 そしたらみんなで寄って力合わせて、各専門分野も合わさって、何かを創り出していこうということをやっていくのは、もう一つ先の段階でしょ?
小野 心のこと、内面って普通に言っちゃうとね、ちょっとこう、その個人に問題があって、それにはまあ宗教とか、或いは修養とか、瞑想とかってなっちゃいますね。その人の心や内面と社会とどう関係があるの?ってね…。
内藤 そういうのが前提に、ちゃんとした心の人達が、集団として社会を創ったら上手くいくよ、という理屈はその通りだと思いますが。次には、そういう志の人達を社会づくりにどう繋ぐかということですかね。
真保 だから、その辺がちょっと接点ができてきたわけですよね。
小野 今インタビューが来てるって言うのは、その“U理論”の研究室とハフポストっていう、あのアメリカ大手のウェブニュースとが組んでトランスフォーミング・キャピタリズム・ラボ(資本主義を変換する実験室、研究)っていうプロジェクトを立てて、そこから質問が来てるんですよね。
だから、どうやらアズワンの経済システムと、その人の内面の変容が両方起こってるということには注目してくれているみたいなんです。
内藤 でしたらここの場合は、具体的な経済の新しい仕組みをどう見せるかでしょうね。
小野 そうですね。多分注目しているのはそっちの方だと思います。
内藤 内面は勝手にやってください、外から見えないから、というわけにはいかない。
そういう新しい経済の仕組みを ちゃんと受け入れられる志の人になっていないと、できないですね。
つづく
「U理論」のWebにアズワンネットワーク鈴鹿コミュニティの活動が紹介されました。Webページはこちらへ>>>https://www.presencing.org/#/transforming-capitalism-lab/gallery/one-household-economy-in-city
The presensing Institute >>>https://www.presencing.org/#/transforming-capitalism-lab
出席者 内藤正明(京都大学名誉教授、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターセンター長)
真保俊幸(ScienZ研究所)
小野雅司(ScienZ研究所)
坂井和貴(ScienZ研究所)
片山弘子(GEN-Japan代表)
◆これまでの記事
第1回 プロローグ
第2回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《1》
第3回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《2》
第4回 何のための研究か? 専門化し細分化している現状《3》
◆CSSとは
サイエンズ研究所によるCrossover Study Session 1 プロローグ
- | -