恵共同体、アズワン物語〈6〉「計画というフィクション」


「計画(というフィクション)を共有していても、その時の実際がある」

恵メンバー81人の中で、一泊早くやってきたのが小中高の子どもたち17人と先生2人の19人だ。やって来るその日は、名古屋で水族館を見学し、夕食を済ませてから夜に鈴鹿に来る計画だった。

こちらも、駅までの迎えの時間にドライバーが車を用意し待機していた。ワゴン車1台、乗用車2台、荷物車1台の4台を用意して。

ところが、予定時間の夜9時30には着けないという連絡が入る。どうやら名古屋で乗る電車を間違えたらしい。10時半過ぎるということと子どもたちはまだ夕食を食べてないということも。

また、電車の乗り継ぎもうまくいかず、迎え便も遠方の駅まで出迎えた。

こちらのメンバーもその対応をLINEでやり取りした。

僕も待ち遠しくなり、今か今かと外に出て待った。到着したのは夜10時半を回ったころだ。車が次々と到着した。中から小さな子どもたちが降りてきた。みんな元気そう。無事到着したことを一安心した。はるばるこの子たちが来たことを、しみじみと思った。

アズワンハウスにはアカデミー生という「サイエンズを学ぶ」学生たちが暮らしている。その彼らが子どもたちを出迎えてくれた。持参した韓国ラーメンをアカデミー生が調理し、11時頃からの夕食になった。みんなお腹を空かせているようで、バクバク食べた。

翌日午前中は、「すずかの里山」という車で15分ほどの場所へ行き「里山遊び」を企画していた。「今晩遅くなったが、どうする?」と聞いてみると、先生から「子どもたちは、大丈夫だ」と言う。翌朝からは予定通りに動くことになった。

遅い到着になったが、みんながそこに合わせて動いていた。誰かが指示するでもなく、恵の情報をそれぞれが受けて、それぞれが思い思いに体制を作っていた。たぶん、こうしよう、ああしよう、という動き方ではなく、気持がそこに集まっていたから自在に動けたのだろう。

ちょっとしたハプニングだったが、明日から来る62人のことを思った。こんなふうに受け入れられたら……。つづく(文・いわた)
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