龍くんの話は、以前、不動産会社でサラリーマンをしていた時の話から始まった。
お客様にとっていい物件でも、会社の利益にならなければ勧めない。
そんな矛盾と社内での競争と実績評価の非人間的扱いにうんざりする。
会社を辞め、仲間で理想の会社づくりへと動き出す。そんなキッカケから、
会社のバックボーンとなるサイエンズ研究所やサイエンズスクール、コミュニティの成り立ちにも触れ、現在の会社になるまでの経緯と今の気風をどう作ってきたかを展開していく。
話し合っても仲が悪くなって、うまくいかない原因は何か?
仕事がよくできる人を大事にすると、どんな気風になるのか?
業績好調だった支店を閉めてもやりたかったこととは?
会社の成長とは何か? 業績や利潤追求ではないものとは?
人が動く動機とは何か? 命令や報酬ではない、人間本来の原動力とは?
さまざまな失敗を経験しながら、研究を重ね、現在の気風――「社員がのびのび楽しくやれる会社」が出来上がっていく。
そうなるのにも4、5年かかったそうだ。
龍くん自身も確証があったわけではない。しかし、一貫した目的からブレない姿勢があった。
「社員のための会社。会社の業績や効率優先ではなく、社員が幸せになっているか。社員の気持ちはどうか」
そんな視点で、常に研究会、検討会をしながら、今も進んでいる。
届け先でお弁当をヒックリ返したり、注文日を間違えて作ったりの失敗談も披露する。
人を責めたり、始末書をかかせなくても、人の気持ちはどう動き、改善されていくか、エピソードを交えながらの1時間半は、あっという間に過ぎた。
果たして、この話をどんなふうに経営者の皆さんは聞いただろうか?
講演が終わり、長老の会長さんが締めの挨拶をした。
「最近、民主主義も限界がきたし、資本主義も限界がきたなと思い、
これから先、どうしたらいいかな、と考えていたところでした。
教育も、いじめの問題も、あらゆるところで躓きはじめている。
そして、こういう生き方があるんだ… 人間を中心とした。
新しい人間が求めている道がここに出てるんじゃないかな…
わが社もこんなふうにやっていきたいと思いました」
(何か、伝わっている感じがした)
フォーラムは散会となり続いてカフェでの懇親会へ。龍くんを囲んで話が弾む。
「これは、私の理想の経営です」という社長さんもいた。
「カルチャーショックでした」、そんな言葉も飛び出す。
カフェでの皆さんの顔は、何か晴れ晴れとしていた。
バリバリの社長さんも普段は社員に厳しいそうだ。でも、龍くんに本音を漏らす。
「社長は淋しい。社員だけで飲み会に行ってしまったり、私が入ると場がしらけたり。私は仲間に入れてもらえない。本当はみんなと楽しくやりたい」
(あ~そんなこと思ってても、強がってたら言えないこと)
講演後も、Facebookで出席者の皆さんが話題にした。そのコメントを拾ってみた。
「いろいろな勤務の仕方があり、月に1.2度のみの人あり、1週間休んで旅行に行く人、毎月1週間づつ研修会に参加する人ありで、その日蓋をあけないとシフトがはっきりしない中で、同じ業界では考えられないほど短い時間で、日に1000食のお弁当を作っておられるとのこと。生活のためにいやいや仕事をするのでなく、楽しんでいるからという言葉が説得力ありました。」
「こうだと良いなぁが、形になっていることと、ここまでやれるのか、というカルチャーショックでした。大きな革命を起こさなくても、日々の営みの中から願う世界に楽しく移行できることを見せて頂きました。壁は、自分の中にありました」
「これから先の方向が見えてきたように思いました」
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時代が変わってきているのか、または記者の頭が固定したままなのか、
こちらの方が目からウロコでした。
現代の競争社会を必死で生きる経営者の皆さんからしたら、
「子どもじみている」「甘い考えだ」と冷めた視線を浴びるのかと想像していた
からです。おふくろさん弁当のような会社を皆さんも求めていたなんて。
そして、とても通じていました。そんな温かい経営者さんたちの気持ちにも
触れられました。
おふくろさん弁当も一つの事例です。こんな会社が地上の各地に作られて、
みんなが幸せになっていけたらな、と思いました。(記者:いわた)
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